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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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永無止境

「はっはっはっはっ!」

 人狼は得物の狼牙棒を手にして部屋から出て、宮廷内を駆けて。驚き戸惑う人間たちを眺めて、愉快だった。これに秦算も続いた。

「頭領!」

 関焔は人狼を追った。

(一体どうしてしまったってんだ!)

 維新を成し遂げたと思ったら、様子がおかしくなって、屍魔がまた出て、挙句には頭領が人狼になった。

 もうしっちゃかめっちゃかで、訳が分からない。

 しかしそれが現実に起こっているのだ。

 この混乱は皇族の監禁された皇帝の私室にまで聞こえた。見張りの兵は顔を完全に青ざめさせて、不安を抑えきれず、皇族や香澄たちをほっといて様子を見にゆき、部屋を離れた。

「よし、行くぞ!」

 それぞれ頷き合い、まず香澄と源龍が駆け出した。源龍は打龍鞭をしっかと握っているが、香澄は七星剣を抜かず鞘に納めたままの無手であった。

 なんと源龍と香澄と並んで、皇太子も一緒に駆けた。

「あぶのうございます」

 と後から声がするが、皇太子は気に留めなかった。

「中庭の道順は覚えているぜ!」

「それでも、直に案内した方がいいでしょう?」

 皇太子はつとめて笑顔で言う。香澄は無言で頷く。

 ともあれ、脱走である。何が原因か知らぬが、宮廷内も混乱している。この機を逃さず、打ち合わせ通り皆で一斉に脱走を始めたのである。

 まず先駆けに源龍と香澄、皇族と一緒に龍玉がいてやり、背後を羅彩女が守る。しかし皇太子も先駆けするとは。なかなか肝の座ったことであった。

 脱走のさなか、多くの官人や女官、守備兵とでくわしたが。皆呆気にとられて見送るばかり。幸いにして妨害はない。

 宮廷内の人々は皆、混乱が起こったことを聞きおよび、不安そうにしていて。そこに皇族の一斉脱走。頭がついてゆけないようだった。

「もうすぐだ!」

 皇太子が言えば、なるほど出入り口が見えてきて。最後のひと踏ん張りと力を振り絞って駆けて、ついに中庭に出た。

「おい、貴志! いないのか!」

 源龍は空を見上げて、目いっぱい叫んだ。

「おや?」

 船の上から、宮廷の異変を感じた貴志と虎碧だったが。中庭に何かの集団が駆け込んでくるのが見えて。目を凝らして見れば……。

「阿澄に、源龍たち!?」

 この混乱に乗じて脱走したようだが、なるほど虎碧から聞いた通りの十数名の皇族も一緒だった。

「リオン、船を!」

「あいよ!」

 リオンも小屋から出て、宮廷を見下ろし。船を動かし、下ろす。マリーも気が気でなさそうに、外に出て、祈るように手を組んで様子を見守る。

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