永無止境
一度鳳凰に源龍と一緒に飲まれたことがあったが、人の世界ならぬところに行かされて、光善女王が翼虎になるところを見て、そこからまた人の世界に戻った。あれは一体何だったのだろうか。
天下に食われた他の者たちは、どうなったのだろうか。どうして自分たちは戻れたのか。
考えたところでわかるはずもないが、考えてしまう。
「事が起こるか」
唸るように言う。
「鳳凰は見つけたようですね、餌を。でも……」
マリーが空を見上げて言う。
「鳳凰はなぜ天下となって人を食らうようになったのでしょうか。もしかしたら鳳凰が人食いになったのは、人のせいかもしれません」
「……」
その言葉に、他の者たちは言葉が出ない。ただ、すごいことを考え着くものだと感心していた。
服の上からふところにある筆の天下に触れる。
反応はないが、ここでは何を描かされることになるのか。
リオンはふと、船を宮廷まで動かすことを思いつきそれを言えば、他の三名の賛同を得て船を動かす。
赤い瓦屋根の豪奢な建物が見える。それが宮廷だった。その上空で船を停める。周囲を見渡せば、宮廷の近くに二階建て以上の建物はない。高い建物は皆宮廷から遠く離れたところに建てられている。
宮廷を上から見下ろさぬように、法によって近くに高い建物を建てることは禁じられているのだ。
だからもし何かで下りる時は、船を下ろさなければならない。
船縁越しに下を見下ろす。
宮廷周辺は兵が守りを固めている。数か所ある中庭でも人の姿は見える。それらも兵で内側の警備をしている。外も内も守りを固め抜かりなし、といったところか。
この中で皇族や高位の臣下らは監禁されていた。
さて、中の様子はどうなっているのだろうか。
「祝杯でも挙げているかな」
貴志が皮肉っぽく言えば。
「ああ、美味しいものをお腹いっぱい食べたいなあ」
と、リオンは切なそうに言う。とりあえずの食べ物はあるが。保存食であり数に限りがあるので贅沢はできない。
では実際は中はどうなっているのかと言えば。
「頭領、どうして?」
玉座に座す石狼を見上げ、関焔は声を張り上げた。隣に秦算。
「胤帝の見事な死に様をどうして人民たちに伝えないんですか。それに、どうして頭領が玉座に座っているんですか!」
「うるさい、つまみ出せ!」
石狼は有無を言わせず、近くの兵に命じれば。兵は槍を突き出し、
「頭領のご命令に従ってください」
と冷たく言う。
「そんな」
それでひるむ関焔ではなかった。穂先を目前にしながらも、なおも石狼を見据えた。その肩を秦算が叩く。




