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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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永無止境

 外に出てみれば、火の手はまだおさまっておらず、懸命な消火活動が行われていたが。屍魔は全て死人に戻ってぴくりとも動かず。伴顕ばんけんは処刑され、それにより反魂術が解けて、屍魔は死人に返ったのは本当だった。

「いやあ、北娯維新軍には助けられたなあ」

「ありがたい、ありがたい」

「北娯維新軍様々だ」

 そんな声も聞こえた。

 突如現れた屍魔と渡り合って人民を守り、さらに悪政を布く胤帝いんていを抑えた。そのおかげでか、屍魔も死人に返った。

 人民が北娯維新軍に感謝するのも、道理ではある。

 空を見上げれば、きらめく星々の中に紛れ込むように船が浮かんでいた。その真下を目指して駆ければ、果たして飛び降りた高い建物があり。跳躍して屋根伝いに上へ上へとあがり、ついには船までたどり着く。

「碧児!」

 マリーは安堵し、娘のそばまで駆け寄り、身を寄せ合う。それを笑顔で見守る李貴志イ・フィチとリオンであったが。今はゆっくりしていられない。

 虎碧こへきは事の次第を三人に伝えた。

 マリーとリオンは怪訝な顔をし、貴志は、

「そうか……」

 ここにいる四人の中で一番物憂げな表情を見せる。

 数多あまたの屍魔が出現したのは、伴顕なる術者の術が不完全なためであったというが。

「伴顕なんて人物は出してないのに」

 どうして、書いてないことが起こり、書いてない人物がいるのか。心を緩めれば混乱にとり憑かれそうなものを禁じ得なかった。

「世界樹は僕らに何をさせたいんだろう」

「さあ、わかんない」

「どうしてでしょうねえ」

 貴志の疑問に、リオンは少しおどけながら応え。マリーは微笑を浮かべて、疑問に追従する。虎碧は無言。

「ただ私たちは、世界樹のお導きに従うのみ……」

 子どもの頃であれば、そんなことはどうだっていいじゃないか、と応えていたことを、マリーに戻って、悟ったようにつぶやく。

 ともあれ、今現在である。

 屍魔出現の混乱のどさくさに乗じて石狼せきろうら北娯維新軍は江北都こうほくとを制圧した。貴志はそれからの歴史を思い出して、不穏なものを覚える。

 次代の皇帝・健烈帝けんれつていは五年後に死亡しているが。死因ははっきりわからず。それどころか荒淫による性病によるもの等、貶める意図が見える説もある。

 皇帝がよからぬ死に方をしても隠すのが通例であるが。記録を残したのは北娯を滅ぼし併合した南理、後の南北朝時代の南朝の理とされるが。もしかしたら石邦せきほうらが記録を残し、理はそれを継承したに過ぎないのかもしれない。

 いずれにしても、歴史上では石狼のもととなった人物の石邦の反乱により北娯は滅びの下り坂を駆け下ることになるのだ。

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