表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
274/539

鋼鉄姑娘

「ここは香澄に任せてりゃいいよ。あたしらは、ここを出て船に戻ろう」

「……」

 源龍は香澄を見据えて、なかなか答えない。龍玉と虎碧は様子を見守る。

「……」

 源龍は判断に迷っているようだ。彼も彼で、心に引っ掛かりを覚えていた。

(これで全部終わったわけじゃねえよな)

 むしろこれから始まるのだ、という気が強くする。

「オレもここにいるぜ」

 などと言い。なぜか香澄は微笑んだ。

「ちょ、ちょっと! 本気なのかい」

「上手く言えねえが、ここにいた方がいい気がするんだよ」

「って言うか、ここは宮廷だし、庶民がいていいところじゃないだろう」

「朕はかまわぬ」

 話の途中で胤帝が許しを出す。

「香澄の知り合いならば、信じられる。朕はどうなってもよいが、妻子たちが気がかりじゃ。できるなら、香澄と力を合わせて、守ってやってほしい」

 源龍が世俗の、江湖の者だというのは見ればわかることだったが。人の位や身分を気に掛ける余裕はない。守ってくれるものがあれば、これにすがるしかない。

 その様は一国の皇帝と思えぬほどに弱弱しいが、逆に言えば、妻子思いであり、また罪悪感からとも見て取れた。

 妻子らは寝台のそばで身を寄せ合い不安そうにしている。正室の皇后と、その子二人。背の高い少年が皇太子、次代皇帝の健烈帝となる。次子はまだ年端もゆかぬ女児の公主であった。

 他十名ほど、豪奢な身なりをした皇族たち。

「あたしもここにいようか」

 龍玉もそう言い、虎碧に視線を移し、

「あんたは船に戻って、事の次第を伝えてあげて」

「わかったわ」

 阿吽の呼吸で龍玉と虎碧は頷き合って、虎碧は素早い動きで宮廷を後にした。

 宮廷の入り口では、石狼や秦算、関焔が集まった人民の前で仁王立ちし。

「維新は成った!」

 と声高らかに宣言していた。

 その横を駆け抜けるわけにもいかないので、丁度官人を見つけ、別の出入り口を教えてもらい。そこから外に出た。もちろんそこにも見張りの兵数名はいた。装いを見れば宮廷の守備兵もいた。彼らは完全に北娯維新軍側に着いたのだ。それを見て、北娯維新軍の兵は宮廷を完全に抑えたのを実感した。

「あ、おい!」

「かまわん、行かせてやれ」

 元守備兵が驚き制止するのを、北娯維新軍の兵はかまわぬと、虎碧を行かせた。幸いというか、北娯維新軍の兵は一緒に皇帝の私室にいた者であった。

 石狼から、好きにさせてやれ等、指示が出ているのかもしれない。

(泳がせているのかしら?)

 多少警戒しててもよさそうなものだが、自由にさせてもらっているのが、変に引っ掛かった。が、あれこれ考えることはせず、船を目指して虎碧は駆けた。


鋼鉄姑娘 終わり

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ