鋼鉄姑娘
「屍魔同士、共食いをしていたのです……」
「……げっ」
貴志はあらぬ想像をして、眉をしかめ。信じられないと首を横に振る。源龍は胡坐をかいて腕を組んで、瞑想するように静かにしていた。
マリーと虎碧は目を伏せて、静かにして。龍玉は屋根の上で胡坐をかいて、リオンの話を聞く。
反魂術がどういうものか知らないが、とんでもない魔術だということはわかった。
(しかし龍玉さんは、そういうのを見たにもかかわらず、あんなに明るく振る舞えるのか。やっぱりあやかしの類なんだなあ)
貴志は龍玉が人間ではないことに、改めて気付いた。しかし、時には彼女のそんな空気を読まぬ明るさも必要だろう。
「おい、狐」
おもむろに源龍は龍玉に声をかける。
「お前妖怪なんだろう。魔術に詳しくないのか?」
「それよく言われる」
龍玉は残念ながらと首を横に振る。
「なんだか知ってるみてえだったじゃねえか。あっさりと反魂術なんて言ってたが。知らねえのか」
「まあね。多少のことはともかく、詳しくは知らないね。人間のやることは理解しきれないよ」
妖怪の九尾の狐が、まるで人間の方が怖いと言いたげな素振りを見せる。
「人狼のことはどうだ?」
「人狼?」
人狼と聞き、一同ははっとする。白羅に飛ばされた時に遭遇した妖怪の類だ。あの時は画皮にも遭遇し、これらと一戦を交えた。
「ああそんなのもいるねえ」
龍玉はちょっと考えたが。
「もしかしたら、関係あるかもしれないね。でもあいつが今どこでどうしてるとかは、わからないよ」
と、答えるにとどまった。
「お前ら妖怪は人間をたぶらかしてるじゃないか」
「そういう奴もいるって話さ、妖怪みんながみんなそうするわけじゃないよ。それに……」
「それに、なんだ?」
「人間の方で妖怪や妖魔、魔術とかを求めてくることもあるからねえ。そういったことはごちゃごちゃで、これはこうだ、って断言はできないよ」
「ややっこしいことだな」
「そうだねえ」
変に気が合って一緒に頷く。羅彩女は変に腹が立っていた。
ともあれ、買い出しはだめだった、ということで。さてこれからどうするか、ということに話しは移った。
「なるだけ人目につかないようにしようと思ってたけど、この有様じゃそうもいかなさそうだから、江北都に行こうか」
江北都、南方の大河の庸子江の河口の北岸にある、北娯の都である。
「木を隠すなら森の中ってことかな」
「そうだね、いっそのこと」
貴志とリオンがそう言い、他の者に意見を求めた。




