鋼鉄姑娘
「はあー、わかってねえなあ。頭の中がお花畑だ」
などと酷評を源龍は無遠慮に言い放つ。
「そんなことを言うのか」
「言っただろう。大仰な言葉で正義とか抜かす奴らは信用ならねえと。きれい事を言いながら、結局はてめえの権力だとかそんなことのためにやってんだよ」
(源龍さん乱暴なところがあるけれど、世の中のことをよく見てきてるのね)
虎碧も母と別れてから市井を彷徨い、そこで見たくないものをたくさん見て来た。龍玉と巡り会って、面倒を見てもらっていなければ、どうなっていたか。だから無言で成り行きを見守りつつ、内心源龍に賛同していた。
「いやいや、これは小説だし」
「でも、少しは世の中の現実的なことを含めても、いいと思いますよ」
言ってから、はっとして、
「言い過ぎましたか? ごめんなさい」
と謝る虎碧であった。無駄口は叩かず、沈黙していようと思っていたのに。
「そうだね、虎碧の言う通りだね」
龍玉のだめ押し。
貴志は落ち込んで、どよ~ん、と心が曇っているのがうなだれた様からわかった。
この様子を見て、羅彩女がかえって沈黙しているが。
(貴志はいい奴だけど、作家の素質は疑問ありね……)
とは内心考えていた。
「……でも」
マリーだった。
「その内容になったのは、貴志さんの優しさからだと思いますよ。勧善懲悪をもって、世の中によくなってほしいという、人としての優しさだと」
「まあ言われてみればそうだねえ。そうなってくれた方が、あたしら庶民も助かるし」
マリーの助け舟に羅彩女も乗っかり、貴志を励ます。リオンもうんうん頷く。虎碧も言葉を継ぐ。
「そうそう、私も、その上で勧善懲悪をすれば、もっと面白い話になったのになあ~。と言いたかったんですよ」
「あ、ああ、ご助言どうもありがとうございます」
貴志は苦笑しながら応え。あらためて自分にはどうも素質がないようだと自覚させられたのであった。
「はい、振り出しに戻るよ!」
龍玉は強引に場を仕切って、ここで貴志の小説の話を打ち切らせる。話が横道にそれっぱなしだ。
「まあ、もう夜も遅いし。話もまともにできそうにないから、もう、寝ようか」
有無を言わせず龍玉は場を仕切って。羅彩女は、えらそーにと内心舌を出し。
他の面々は、それもそうだねと、すべての話をやめて休むことにした。が、源龍と羅彩女は鎧を着ている。知らないうちにまとわされたのだ。
「まったくいよいよ気持ちの悪い話だぜ」
「ほんとほんと」
愚痴を無遠慮にこぼしながら鎧を脱ぎ、無遠慮に横になって。寝息を立てる。
「じゃあ明かりも消すよ」
リオンが指をぱちんとならせば、光は消えて。それぞれそれに合わせて雑魚寝して、眠りについた。




