表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
255/539

鋼鉄姑娘

 源龍は、べっ、と忌々しそうに唾を吐き。屍に戻った屍魔を忌々しく見据える。

「反魂術で蘇った屍魔がうろついてるなんて、のっぴきならないことになってるじゃないの」

 龍玉は九つの尾を揺らしながら周囲を見回す。虎碧も首を回す。まだいるのか、もういないのか。船の方でも篝火が焚かれて、それがこの闇夜の中で龍玉と虎碧の目を補っていた。

「まあまあ、ここは船に戻ろう。皆と会えたことだし」

 リオンはそう促し、皆はそれに従い船に乗った。

 屍魔がいて、乗りこまれたらいやだからと。リオンの例の力で船は宙に浮かび、羅彩女は不思議そうに、あるいは面白そうに船縁から下界を見下ろす。

 と言っても、もう真っ暗で何も見えない。

 空に浮かぶ船の中、小屋の中で一同円座になって。再会したのだと、ようやくわかってきた。

「ああ、怖かった」

 今更のように、マリーは深いため息をつく。安堵と恐怖が入り混じっているのが、顔色からうかがえた。

 ところで、明かりはどうしてるかというと、リオンが指を鳴らせば。松明の火は消えて、代わりになにか部屋に漂う数個の粉つぶが光を放って、部屋を明るくした。

「そんな力もあるのか」

 貴志はただただ驚く。世界樹はこの褐色の肌の少年に大きな力を与えたものだと。

「でも死人を生き返らせることはできないよ」

「当たり前だ、そんなことをされてたまるか!」

 源龍は八つ当たりのように乱暴なものの言い方で反応し。リオンは苦笑する。

 虎碧は母に寄り添い。龍玉はその虎碧の隣。マリーのもう一方の隣に、貴志。それから源龍と羅彩女、リオン。

 ひとり足りない。

 香澄は何を思って北娯維新軍に残ったのか。

「貴志さん、さぞ驚いたろうねえ」

 リオンが悪戯っぽく言い。貴志は苦笑しながら頷く。

「なんで貴志の小説の世界に?」

「さあ、わかんない」

 リオンはいたずらっぽく舌を出して、そう言う。羅彩女も苦笑する。

「わかんないって。それも相変わらずだねえ」

「世界樹の真意は誰も読めないよ。ただ行かされるところに行って、やることをやるしかないね」

「なんていうか、こう、他のやつに操られて、こう、なんて言うのか」

「操り人形のよう?」

「そう、それだ。気持ち悪いもんだぜ」

 源龍が言葉に詰まったのを貴志が助け舟を出し。それをリオンとマリーは微笑ましく思った。

「そうそう」

 何か閃いたように龍玉は、

「あのさ、貴志さ、あんたが書いた小説ってどんな内容なの?」

 と、貴志に問う。

 問われて貴志は、内容を述べて答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ