回到未来
とかしているうちに、僧侶の数が増えてきて。その中に、高齢ながらもしっかりとした足取りの僧侶が、三人に近寄る。
「これは、法主さま!」
僧侶は急ぎ跪く。
「よい。皆、立つがよい」
促されて、一旦は跪いた僧侶たちは立ち上がった。
僧衣をまとっていても枯れ木のようにやせ細る様は隠せず。僧衣も他の者と同じ。他の僧侶が法主さまと言わねば、一介の老僧と思ってしまいかねなかった。
しかし、その目の鋭さは。
「漢星で鬼が現れ、勇士が翼虎とともに戦ったと。その勇士が、あなたたちかな?」
じっと見据えられて、源龍と羅彩女も負けじと睨み返す。そういえば、僧侶たちは暁星の言葉を使っている。辰人の源龍と羅彩女はその言語に疎いが、知らぬ間にある程度でも理解できるようになっていた。
それを得意になったり不思議がるような余裕はなかった。
「だったらどうだってんだ?」
「ふふ、そういきりなさんな、お若いの。わしは、慕っておったのだ」
「法主さま」
他の僧侶が遠慮がちに声をかける。特に羅彩女をちらりちらりと眺める。
「そうじゃな、ここ光善寺は、両性並び立つことあいならぬ。寺の外の庵に、ひとまず行こうか」
「クァンソンシ……」
源龍と羅彩女は、寺の名を聞き、はっとさせられ。羅彩女は咄嗟に問う。
「ここは、光善女王ゆかりの寺?」
「その通り、ここは慶群。古代白羅発祥の地にある、光善女王ゆかりの寺じゃ」
源龍と羅彩女は、顔を見合わせた。貴志は無言。
なるほど光善寺という名になったのは、光善女王からである。巍との戦いののち、武徳王はこの寺の名を光善寺と改めた旨が語られた。
ということは、相当の古刹でもある。
ここから離れたところに尼寺もあるが、もちろん男子禁制である。家族が面会に来るなどしたときは、外の庵で面会する決まりとなっているが。その尼寺に、光善女王はいたのである。
「……」
無言だった貴志だったが、ふと、法主に声をかけた。
「元煥法主。もしかして、過去の記憶をお持ちか?」
突飛なこのものの言い様に、源龍と羅彩女はもちろん、他の僧侶も、面食らった。行方不明になった宰相の末っ子が石窟にいたと思えば、このものの言いよう。気が触れたのかと、思った者もあった。
「過去の記憶か、そうさな、転生を繰り返して今がある身なれば。少しばかりはあるやもしれぬ。例えば、さびれた漁村に突然船がやってきて……」
「ああッ!」
貴志はたまらず声をあげてしまった。白羅時代に飛ばされて、李志煥なる者と出会った。そしてこの法主、元煥。ともに煥の字がある。




