表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
236/539

回到未来

 暗闇の中、それでも恐怖はなくむしろ安らぎがあって、魂が肉体から解放されたかのように心地よく漂う。

 それは後で思い返せば、随分と長かったとも思えるし、一瞬であったとも思えた。不思議な時間感覚。

 一同が、というには人数は少なくなっており。目が覚めて瞼を開ければ、源龍と貴志、羅彩女の三人だけしかおらず。しかも武具は一切なく、私服姿だった。

 貴志はふところの筆の天下を探った。これはあった。

 周囲を見渡せば、なにか石窟の中にいるようだった。

 半円の出入り口から光が指して、うっすらと中が見えて。自分たちは石窟の中の仏像と一緒にいるのが分かった。

 石窟は球状に彫り上げられており。岩山を切り拓いて造られたとおぼしき石窟の中に、これまた岩から削り出したと思しき仏像。

 仏像は台座の上、胡坐をかき、静かに瞑想している。右手を右ひざの上に、左手は組んだ足の上に置いて。悟りを開いた余裕から、くつろいでいるようにも見えた。さらに、壁には、仏像の後ろに並んで立つ菩薩たちが彫り上げられていた。

「ここは」

 貴志は言葉を失った。源龍と羅彩女も、周囲をきょろきょろして見渡したあと、光を求めて、外に出てみた。

「何者だ!」

 一喝が耳に飛び込む。そのあと、貴志の顔をまじまじと見やって。

「あ、あなたは、もしや李貴志さまでございますか!?」

 と、震える声で言う。

 貴志も、その僧侶と顔見知りであった。

「ああ、暁星に帰れたんだ」

 つい、ぽろっとこぼれた言葉。僧侶もそれが聞こえて、不思議そうにする。

「ああ、僕らはもしかして、行方不明になって騒ぎになっていた?」

「はい、それはもう、宮中を巻き込んだ大騒ぎでございますよ。雄王ウンワンも宰相さま、あなたのお父君も大変憂いておられましたし。辰の公主さまも、一時は大変お怒りでございました」

「ああ、やっぱり」

「ただ、公主さまは後にお考えを改められまして、何かの事情があるのだろうからと、不問にされ。お付きの方々とともに辰にお帰りになられました。そう私は聞いております」

「……そうか、うん、まあ、なんと言うか」

 言葉に詰まる貴志を横目に、僧侶は源龍と羅彩女に不審そうなまなざしを向ける。都の漢星ハンスンで化け物や鬼が現れて、勇士が戦ったことはもちろん知っているが、その勇士たちなのであろうか。

「ともあれ、ここで長話もなんですし。なにより、ここは女人禁制でございますれば」

「わかっているよ、すぐに出ていくよ」

 羅彩女はつかつかと歩き出した。

 源龍も、ここが寺院なのがわかって、抹香臭いのは興味ねえと羅彩女とともに出てゆこうとする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ