表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
234/539

回到未来

 ともあれ、大きな鏡がある。

 世界樹に立てかけられて、そこに、下界の様相が映し出されている。

「名君だの名臣だのが頑張っても、後の連中が遺産を食いつぶして、おじゃんか」

 などと源龍は言い、貴志は、

(源龍もなんだかんだで学んでいるっぽいな)

 と、内心感心する。

 他の子どもたちが、どこから持ってきたのか饅頭や茶を差し入れ。おかげでここでひもじい思いをすることはなかった。

「ずっとここにいてもいいねえ」

 などと羅彩女は言う。しかし、

「ここはここで辛いよ」

 リオンすかさずの突っ込むと。

「何もなさ過ぎて、退屈で死んでしまいそうな思いに駆られるよ。あんたたちみたいな連中は」

 続いて、九つの尾を座布団にしてくつろぐ九尾の狐の龍玉がそう言った。

「……」

 ふと、源龍はなにかぴんと来るものがあったようで、

「虎炎石と刑天の野郎はどうしている?」

 と尋ねれば。リオンはある方向を指差し、その先を見れば。めそめそめそめそと泣きくれる子供ふたりがいる。

 空は晴れ青空が広がり、草原も陽光を受け緑も眩しく。心も軽やかになりそうなこの風景の中、虎炎石と刑天だった子供は、周囲になだめられながら、めそめそめそめそと泣いていた(第8部、第20部参照)。

「……」

 源龍は言葉もなく、口をつぐんだ。ともすれば、自分もあんな風にされてしまうかもしれないのだ。

 貴志と羅彩女も眉をひそめる。

「子どもに戻されて、ずっと泣かされ続けるなんて。これも地獄の責め苦だね……」

「散々注意したのに、彼らは力を私利私欲のために利用した。だから世界樹は怒って罰を与えた」

「おお怖……。……って言うか、他に気になることもあるんだけどさ」

 羅彩女はマリーと虎碧の母と娘に視線を移した。

「あの狼野郎は、どうした?」

 口を閉ざしていたはずの源龍が先に口を開いた。

「さあ、それはわからないな。彼は僕らの管轄外だから」

「管轄外ってなんだよ」

「言葉通りのことさ。でも人狼もなんだかんだで力がある存在みたいだから、どこかでまた遭遇するかもね」

「まったく、わけわかんねーな」

「いや他にあるでしょ」

「ん?」

 羅彩女は母と娘を見据えている。源龍もそれに気付き、視線を母と娘に移した。

 貴志はと言えば、マリーを見る目が、すこしおかしい。平静を装っているが、変に顔が赤らんだりしている。

(まあ)

 ずっと黙ったままの香澄は、貴志の様子を見て微笑みを浮かべた。

(なるほど、おしとやか熟女が好みなの、このおぼっちゃまは……)

 龍玉も貴志の様子に気付き、内心ほくそ笑む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ