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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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回到未来

 王宮内は権力争いなどいさかいも多かったが、巍との戦いにおいてもそれは収まることはなく。むしろ戦の危機が迫るほどに、ひどくなり。ついには光善女王が無理矢理出家をさせられ、挙句に行方不明。武徳王ムドクワンはふさぎ込んでしまう有様だった。

 その女王捜索のため、人相書きを書いて一般庶民にも協力を仰ぐほどである。その心痛はいかばかりか。

 ともあれ、志煥は武将に協力を誓った。

「怪異が起きて、翼虎がいて……」

 人々は武士にそんな話もする。にわかには信じがたい話である。しかし、志煥も、

「このようなこともあってな……」

 と話し、志煥がいい加減なことを言う人間ではないのを知る武将は息を呑んだ。

「そんなことが」

「恥ずかしながら、あまりのことに気を失う有様。だが翼虎は、不思議なことに心が安らぐ存在であった」

「翼虎……」

 武将は言葉もない。話に聞く怪異や翼虎は、吉と出るのか凶と出るのか。

 ともあれ、縄で船と船をつなぎ、曳航し。船は港を目指した。

 一日かけて港に着けば、なにやら大騒ぎである。何事かと思えば。

「翼虎が現れ、巍軍を追い払ったそうだ!」

 と、そんな話が飛び交っているではないか。志煥たちは目を丸くし、驚きを禁じ得なかった。

「翼虎が……」

 志煥は思わず空を見上げた。

 空は雲一つなく、透き通るような青さだった。

 

 白羅に攻め込んだ巍軍は撤退し、それから戦後交渉に入り。その交渉の席には志煥も同席した。

 その交渉における志煥の功績大きく、巍に以後白羅に攻め込まぬことを誓わせた。

 その功績が認められ、武徳王によって王宮に招かれ。重臣の列に加わり、その善政を助け、世の人々に名君のそばに名臣ありと讃えられるようになった……。


 ところは変わる。

 いや、時も変わる。

 時代は進み。武徳王と光善女王、そして翼虎は伝説となり、李志煥も名臣として語り継がれるほどに、時は進んで。

 半島を治める国の国名は、暁星ヒョスンとなった時代。

 巍も、時の移り変わりの中で、しんに変わった。

 ということを、世界樹の木陰にいて、一同は見た。

 一同とは、香澄と源龍に貴志、実は大人の女性だった世界樹の子ども、もといマリーにその娘、虎碧とその相方で九尾の狐の龍玉、そして褐色の肌の子どもであるリオン。

 広い草原の中、一本、大きくそびえ立つ世界樹。周囲では、小さな子供たちが思い思いにはしゃいでいる。大人はいない。

 いや、大人であった者が、子供に戻されて、ここにいる。という場合もある。

 源龍は、かつて、打龍鞭の前の持ち主であった虎炎石なる者や、刑天が子供に戻されたのを思い出しながら、マリーの姿を眺めた。

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