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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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回到未来

 龍玉は軽く受け流して、はっきりと答えない。志煥はなおも聞こうとするが。

「もう大丈夫よ。それだけははっきりと言えるわ」

 貴志を担いだ香澄は跳躍し、金色の羽毛を足掛かりにして空を目指して駆け上がってゆき。九尾の狐の龍玉も、同じように源龍と羅彩女を担いで跳躍し。リオンも続く。

「さあ、ゆきましょう」

 世界樹の子ども、ではない、マリーも娘の虎碧と手を取り合って、金色の羽毛を足掛かりに、空へと駆け上がってゆく。

「お母さん、私たちはどこへ……」

「すべては、世界樹の導きのまま」

 そう言ったきりマリーは押し黙り、虎碧も口をつぐんだ。

 志煥や船の人々は、空の彼方に消えゆく翼虎や、空へと駆け上がってゆく香澄たちを見上げて、何も言えないままに、見送った。

 金色の羽毛はと言えば、一同が駆け上がって姿が見えなくなるにともなって、降ってこなくなった。不思議なことに、あれだけ降り注いだ金色の羽毛は、もはや影も形もなくなった。

 それを不思議がるいとまはなかった。

「あッ!」

 驚きの声が上がる。見れば、船の影が見える。

 緊張が走る。しかし、その船が白羅の船であることがわかって。

「おおーい、おおーい!」

 と、声をはげまし手を振り自分たちの存在を知らせれば、船も気付いてこちらにやってくる。

 しばらくし、互いの顔が見えるところまで近付き、

「や、あなたは、李志煥殿ではないか!?」

 船縁の武将がそう言えば、

「おお、あなたこそ……!」

 幸いにも船の武将は顔見知りの者であった。

「我らは船で戦乱を逃れているのだが、途中色々とあって大変だった」

「ご苦労でござった。我らが助けになろう」

 接舷し、船から船へと乗り移り。志煥と武将は固い握手を交わす。他、屈強な武士ムサも乗り移り、他の人々に声をかけ、様子をうかがう。

 人々は、地獄に仏とばかりに喜んで。子どもたちなどは、武士に抱き着き、歓喜のあまり泣き出すほどだった。

 船は海洋警備のために出航していたものだった。ちなみに、亀甲船はこの時代はまだ造られていない。

は、幸いにも白羅ペクラに比べて船造りは弱い。おかげで海でなら、我が物顔が出来るのだが」

「うむ、寄る辺となる港あっての船、海での暮らしじゃからのう」

「そうじゃ、そうじゃ」

「陸に帰れば、それがしも微力ながら助太刀いたす」

「おお、志煥殿のような、文に長けたお方がいてくれれば、我ら武辺者も後顧の憂いなく存分に戦えると言うもの」

「うむ……」

 後顧の憂い、という言葉に志煥は言葉もなかった。

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