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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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回報戦闘

 急いで鯱は回り込み、前に立ちはだかって、食い止める。しかし大鮫は鯱とはぶつからない、避ける。それを鯱が追う、追われながらも大鮫は船の周囲を、海の中を駆けるように泳ぎ、船に体当たりをする機会をうかがう。

「ちッ、ちょこざいな!」

 羅彩女は舌打ちし、忌々しい気持ちの言葉を吐き捨てる。

 他方、船室にいたリオンだったが、香澄に任せて外に顔を出した。

「うわあ」

 鯱と大鮫の追いかけっこを目にし。源龍と貴志に龍玉、虎碧は阿修羅と空中戦を繰り広げているのを目にし。思わず声を漏らす。

 人々は何とも言えない顔をして、成り行きを見守るしかなかった。

「ひとりに四人がかりとは!」

「うるせえお前が言うな!」 

 源龍の打龍鞭が迫り、さらに貴志の槍も迫り。それをかわしても龍玉と虎碧の剣が迫る。さすがの阿修羅も防戦一方である。攻め手をかわし、あるいは刀で弾き返し。

 三面はともに怒りの形相をあらわしていた。

「翼虎よ、白羅ペクラを救いにゆくんだ!」

 阿修羅と渡り合いながら、貴志は叫んだが。翼虎はどこ吹く風で、ぐるぐるとまわるばかり。

(こうしている間にも、巍軍は迫っているのに!)

 どうすれば翼虎は自我に目覚めるのだろうか。自分たちは何かをしなければならないのか。

「させぬ、させぬぞ! 翼虎に白羅を救われては、我ら悪趣の衆生のさまたげになる。そんなことは断じてさせぬ!」

 四人がかりで攻められながら、阿修羅はそう吠えて。自分たちが悪趣の衆生であることを認めた。

「なにをわけわかんないことくっちゃべってるのよ!」

 龍玉はかわされながらも、他の面々と連携し阿修羅を攻め、刃を閃かしながら吠え返した。

「それは自由のはき違えです、世の乱れに乗じて好き勝手に生きるのは、自由ではありません!」

 虎碧も龍玉に続き声を上げたが、これは吠え返すというより説得や諫言の類だった。貴志はそれを聞いて感心した。

「ようはチンピラってことかよ」

「阿修羅よ、改心し堅気になれ!」

「黙れ、いかに罵詈雑言を浴びせられようと、オレは自由に生きるのだ! 欲しいものを奪い、犯し、憎き者を殺し、世に君臨する! そんな生き方こそが至上なのだ!」

「それをチンピラっていうんだよ!」

 源龍の打龍鞭が唸りを上げる。しかし、何を思ったのかかわそうとしない。それどころか、中の腕と下の腕の四つの手で打龍鞭を掴んだ。

 衝撃は強く、三面はやや顔をしかめたが、うまく掴めて会心の笑みも見せた。

「ぐッ!」

 源龍、咄嗟のことに驚き――。

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