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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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回報戦闘

 ミミズどもはみるみるうちに群れ集まり、ひとつになって、大熊のような巨大なミミズの集合体になったではないか。

「こんなこともできるのか!」

 貴志と龍玉、虎碧は驚愕せざるを得なかった。

「お前ら、ひねりつぶしてやる!」

 熊のような巨体の集合体となり、太い腕がぶうんぶうんと振りかざされて。三人はそれをかわすが、動きも素早く、かわすのもなかなかに一苦労で。我が身に太い腕が巻き上げる風の破片を受けねばならなかった。

「なんて奴らだ」

 源龍と羅彩女にも画皮の合体は目に入るが、それぞれが相手と渡り合っているので助太刀にゆくわけにもいかぬ。

 阿修羅に大鮫、さらに画皮の集合体と、この三つの魔物にいっぺんに襲われて、渡り合わねばならない。

「香澄ちゃんはどうしたんだ?」

「かまうな、あいつがいなくても、オレは勝つ!」

 貴志は思わず香澄不在を嘆いて叫び、源龍は源龍で思わず応えた。

 金色の羽毛はそれらの戦いのさなかに、雪のように、天からはらはらと舞い落ちる。

 船床にも羽毛がたまりつつあり、海にも浮かぶのが目立つようになってきた。しかし不思議なもので、船床に積もった羽毛は、まるで雪のように溶けてなくなってゆくので、溜まってゆくことはなかった。海に落ちたものも言うまでもなかった。

 打龍鞭は唸りを上げる。阿修羅の刀も唸りを上げて、打龍鞭とぶつかり合う。

阿修羅は飛行能力があり、自在に宙を舞う。それに対し源龍は宙を漂う金色の羽毛を足掛かりに跳躍しながら、打龍鞭を振るった。

 阿修羅も闘争の神としてその名が知られている。源龍もさすがに知っていた。それだけに、六本の腕を巧みに動かし、刀を上中下の腕で、あるいは左右で持ち替え閃かせて。同時に拳や掌打、さらに足技もうまく組み合わせ。全身これ武具と言わんがばかりだった。

 さらに顔は回転して三面を入れ替わらせて、それぞれの面で源龍を睨み据え、それぞれの口で、

「この、人間めが!」

「八つ裂きにして肉塊にしてやる!」

「その肉をお前の仲間に食わせてやろう!」

 などなど、思い思いに罵声を飛ばす。

「くちゃくちゃうるせえんだよ!」

 無論罵声に打ちのめされるやわさはない源龍であった。全身武具として襲い来る阿修羅の攻めを巧みにかわし、あるいは打龍鞭で受け流しざまにぶつけようともし。

 そんな空中戦を繰り広げていた。

 その下で、羅彩女の出した鯱の鬼と、阿修羅に畜生として操られる大鮫が、互いの巨体をぶつけ合って、激しく波を立てて渡り合った。

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