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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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回報戦闘

「おい、待て。そんな勝手なことを言うな!」

「犬野郎もどこだかわかんねえところで死にたくねえだろ! これも何かの縁、いちえんちくしょうだ、お前も来いよ!」

「オレは犬ではない。それに、それを言うなら一蓮托生だ!」

「うるせえ!」

 などどやり取りしつつ、結局は皆が駆け出し。しばらくして、一面白一色の世界から、青い空が広がる雲の上に飛び出た。

 金粉に代わって金色こんじきの羽毛が雪のように空から降って宙に漂っている。

 香澄は雲から跳躍し、金色の羽毛に足を掛けて。羽毛から羽毛へと、跳躍して降下してゆく。

 他の面々も同じようにして跳躍し、羽毛から羽毛へと飛び移りながら降下してゆく。

「こんなことが……」

 貴志は驚き信じられなさそうに金色の羽毛を足掛かりにしてゆく。筆の天下は懐におさめて、あの戦場で源龍に手渡された槍を手に持っている。夢、それも悪夢から現に戻ったとしたところだろうが、槍をいまだ持っているところあれも現だったということか。

(それにしても、どうして香澄ちゃんは焦っているんだろう)

 あの、その名の通りお澄ましさんの彼女が、珍しいと、引っ掛かった。

「う、う、う、うわあああーーー!」

 唐突な悲鳴が上がる。人狼だった。羽毛から足を踏み外して、落下していっているのだ。

(ざまあ見ろってんだ!)

 龍玉はしめしめと思ったが、その人狼に向かい伸びる影。打龍鞭だった。

 人狼は咄嗟に打龍鞭を掴んで。源龍も掴ませたまま、降下してゆく。

「う……! 恩に着ないぞ!」

「勘違いするな、お前を仕留めるのはオレだ!」

「言ったな、その言葉忘れるなよ」

「って言うか源龍、あんたもお人好しだね!」

 龍玉のすかさずの突っ込み。

 そう言いながら、どんどんと高度を下げてゆき。ついには船の人々の顔が見えるところまで降りて来た。

 香澄は跳躍し、ふわりと羽毛のように宙を舞い、音もなく静かに船に足をつけるや駆け出し。船橋の部屋の中へと入ってゆく。それを見たリオンも着いてゆく。

 源龍や貴志、龍玉に虎碧も続く。人狼といえば、かなり降りたところで自ら手を離し。

「あばよ!」

 と海に自ら落ちて。それから姿を見せないが、それならそれでと、かまうことはなかった。

「おお、源龍さんに貴志さん、ご無事でしたか!」

 李志煥イ・チファンをはじめとする人々は、鳳凰に飲まれたはずの源龍と貴志が、香澄らとともに空から降りて来たので大きな驚きを禁じ得なかった。

「彩さん、彩さん、起きて起きて!」

 まだ気絶し意識のない羅彩女らさいにょを他の女性が目覚めさせようと頬を軽くたたく。

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