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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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回報戦闘

 女王を吸い込んで蓮華は光り、白蓮のごとくになったかと思えば。光の塔が立ち。蓮華から光の塔を駆け上がるように翼虎が出現したではないか。

「翼虎!」

 源龍と貴志は、蓮華から翼虎が飛び出したのを見て思わず声を上げた。

「ここは天頭山チェトゥサン天湖チェホに通じているのか!」

 鳳凰に飲み込まれて、悪趣を巡らされて。広大な蓮の葉の上で阿修羅と人狼と対峙させられたというような、まったくもって意味も不明な、悪い夢のような展開の果てに。

 今、自分たちがいるところが天頭山の天湖に通じているところであるなど。神仏でもなければどうして想像できようものか。

「世界樹はオレたちに何をさせたいんだ!?」

 源龍も困惑を禁じ得ず、叫び声をあげた。

 阿修羅と人狼はといえば、

「やや、あれは。ならぬ、ならぬぞ。オレが世界をものにするために、人間どもに戦をさせているというのに。あやつはそれを止める気だ!」

 などとわめく。

 四者など気付かず、翼虎は光の塔の中、翼をはためかせて上空へ上空へと高度を上げてゆく。


「きゃ」

 絶句していたはずの虎碧だったが、思わず声が出る。それと同じくして、

「わっ」

 いかなる手段を講じてもその口を閉じることかなわなそうな龍玉も素直に声を出す。

 なんと世界樹の子どもの瞳から突然一筋の光が閃き出て、絵に当たる。龍玉と虎碧はそれを見て驚いたのだった。

 そして瞳から出た光は絵に反射して、上へと、光の塔さながら直立し。かすむ雲の中へと溶けるように消えてゆく。

「わ、わ、なんだ!」

 自分の目から光が出て、世界樹の子ども自身も大変驚く。

 香澄もこの突然のことに戸惑いを隠せない。

「まさか」 

 龍玉と虎碧は固唾を飲んで成り行きを見守れば。そのまさかである。

 絵の、子どもの目から閃き出た光が当たる部分から、翼虎が突如として出現し。

 くうを震わす咆哮をあげて。翼をはためかせて龍玉らに向かって飛んでくる。

 四人ともその眼差しに射止められてか、身動きもできなかったが。そのそばを翼虎が飛び去ってゆく。

 それに続くように現れたるは……。

「うおおー!」

「うわあー!」

「むう!」

「ひえー!」

 それぞれ声をあげながら、翼虎と同じように源龍と貴志に、阿修羅と人狼が目の前に、ぽんっ、と飛び出したではないか。

 同時に光は消えて、四者は少し打ち上げられて、そのまま落下した。

 うまく受け身を取って着地し、すぐに起き上がって周囲を見て、香澄らの姿を認めて。源龍と貴志は驚き呆気に取られる。

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