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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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悪趣巡遊

 ふはははははは!

 耳障りな笑い声を響かせ、畜生どもとともに阿修羅が源龍と貴志の前に降り立った。

 畜生どもはふたりを見て、唸り声をあげて、いつでも飛び出せる体勢をとっていた。

 それで、人狼。

「ふ、見られたくないところを見られたな」

 などと言う。源龍も早速悪態をつく。

「てめえ、なんだその鎖でつながれたみっともねえ有様は」

「ふん。オレは阿修羅さまに飼われているんだ。お許しを得て自由気ままに旅をしていたが、呼び戻されてな」

「ふん、阿修羅に飼われる畜生か。お似合いだぜ!」

「黙れ、畜生にとって阿修羅さまは至高! お飼いいただけることは、身に余る光栄なのだ!」

「鎖でつながれて光栄か。畜生らしいな!」

「おのれ、何も知らぬ無知な人間め。オレの牙と爪でずたずたに……」

 と言っているさなかに、阿修羅は突然人狼の頬を平手打ちした。

 毛むくじゃらな顔のため、ばし、と鈍い音だったが。人狼は衝撃でよろけ、

「お、お許しください!」

 と許しを乞うた。

 三面の三つの顔は、なんと首が回り、代わる代わる人狼を睨み付けている。

 三面ともに美男子といってもよい、秀麗な面持ちであるが。その眼差しは憎悪や冷酷さに溢れて異様な鋭さを感じさせた。

(四悪趣の最高峰と言われる阿修羅か……)

 貴志はごくりとつばを飲み込んで、動悸が激しさを増すのを禁じ得ない。夢の中どころか、仏典の中に放り込まれたのか。

(仏典は厳しい現実も説いている。僕らはその厳しい現実と向き合うことを強いられているのか)

「お前!」

 三面が人狼から貴志へと視線を移した。やはり異様な眼差しでだった。

「オレの事を考えていただろう!」

 有無を言わせず、鎖も手から離し、突然貴志向かって跳躍し。上二本の手で持つ刀が迫ってくる。

「!!」

 貴志はもちろん源龍も咄嗟に避けて跳躍したが、足が離れた直後刃が葉に突き刺さり。すぐ抜かれたが、刺さったところから、びゅう、と水があふれた。泥交じりの茶色く濁った水だった。

 刃を避けて跳躍し、着地してすぐに源龍は打龍鞭を振るって阿修羅に迫った。貴志も槍を突き出し、同じように迫った。

 だが人狼をはじめとする畜生が前に立ちはだかり、襲い掛かってくる。

 人狼は無言で仁王立ちしているが、まるで主から命じられたかのように狼や虎、熊どもが迫る。

「畜生どもがッ!」

 打龍鞭は唸りを上げ、まず熊の伸ばす太い腕をぶっ叩いた。貴志は槍の柄で迫る狼の脳天を打ち、跳ね返りざまに右手の虎の鼻先に柄をぶつけた。

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