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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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悪趣巡遊

 今の白羅ペクラの争いも、結局はそういうことだとも言えるのではないか。

(願わくば、争いが終わり、後に和解せんことを)

 そう願わずにはいられなかった。このままでは、天下に食われるがままだ。

 ふわふわと宙を漂う金色こんじきの羽毛を眺めて。そうするしかない己の無力さを痛感するしかなかった。

 おもむろに香澄は跳躍すれば、何を思ったのか金色の羽毛に乗ろうとする。誰もが羽毛を靴底にくっつけて落ちるのを想像したが。

 あにはからんや、宙に漂う羽毛は香澄を乗せて。香澄もまた羽毛を踏み台にして、さらに跳躍をするではないか。

 すると、それを見た虎碧も跳躍し。香澄と同じように羽毛を踏み台にし、さらに跳躍をするではないか。

「あ、待ちなよ!」

 龍玉も続いて跳躍し、羽毛に足を掛ければ。踏ん張れるこどに驚きつつも、さらに跳躍をした。

「あんたたち、あとは頼んだよ!」

 跳躍をつづけながら龍玉は眼下の世界樹の子どもとリオンに向かって叫んだ。

「え、え、え、ちょっとー!」

 あまりにも無責任に放り投げられて、子どもたちは顔を上げて困った表情を見せた。

 志煥も、ただ呆然と眺めるしかなかった。羅彩女はまだ眠りの中。残りの人々はといえば、

「天女さまだ!」

 と、手を合わせて三人を拝んだ。

 その三人は羽毛を踏み台にして、上へ、上へと跳躍を繰り返し。ついには空高く、姿が見えなくなっていった。

「空の果てまで行けそうだね」

 龍玉はぽそっとつぶやいた。金色の羽毛は途切れることなく、上がれども上がれども尽きることはなかった。

 船では、

「天女さまが何とかしてくれるかも」

 という期待感が溢れて、にわかに落ち着いた雰囲気になった。これには志煥は思いがけないことながら、感謝した。

 世界樹の子どもとリオンは、互いに苦笑しながら、待機することにした。

 それで、三人といえば……。

 ついには、雲を目の前にするところまで来て。香澄は羽毛からひとっ飛びすれば、雲の上に乗った。

 龍玉と虎碧も続いて雲の上に乗る。 

「へえ、雲って乗れるんだ!」

 龍玉はそのふわりとした踏み心地の心地よさを感じながら感心する。端まで来て、下を眺めれば。船は米粒ほどの小ささで、眼下には大海原が広がっていた。

「絶景かな絶景かな」

 よほど雲からの眺めが気に入ったのか、龍玉は得意げに絶景を繰り返す。

 雲は大きいものや小さいもの大小ざまざまに、形も言葉に表せぬほどに様々。三人は跳躍し、雲から雲へと飛び移り、ひとときの間、雲の感触を楽しんでいた。

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