悪趣巡遊
この珍妙な光景を、志煥たちはいぶかしそうに眺める。そもそもが得体の知れない者たちである。
やけに白い肌に碧い目、肌の黒い子どももいれば、見た目は東方風情ながら目は碧く明らかに異国の異民族の血を引いていると思われる少女もいる。
(私たちはどこへ導かれようとしているのか)
そんな先行きの不安はぬぐえなかった。
人々も不安は同じで、我関せずと香澄たちを遠巻きにしていた。が、それはかえって好都合だった。香澄は内心感謝した。
「それにしても、どうしてあなたの目に」
「わかんない。世界樹がいたずらしたのかな」
「で、でも、源龍と貴志はまだ生きてるってこと?」
リオンもさすがに魂消たことだと、肩をすくめる。龍玉と虎碧も、訳が分からないながらもその目を見せてもらい。驚きを禁じ得なかった。
改めて見ても、やはり両の目に同じように、源龍と貴志が映っていた。彼らはいずこかの谷底らしきところをさまよっていた。目を凝らしその顔つきを見れば、険しいながらも気は張っていて、弱っていはいなさそうだった。
(それにしても、この、急転直下というか、あまりにも目まぐるしい)
虎碧は息を呑んだ。光善女王を探し求めて天頭山まで登って、天湖に船があって。成り行きで船に乗り、不思議にも海に下りて。今に至る。
今自分は現ではなく、それこそ夢の中に放り込まれているのではないかと思わざるを得なかった。
うっすらと、脳裏に大樹の面影が浮かぶ。いつだったか、草原に一本立つ大樹の木陰にいる夢を見た。しかし、それだけである。誰とも会わず、ただ木陰にいた。
(でも、なんだか懐かしい)
不思議にも、その夢を覚えているが、とても心安らぐ夢だった。と思い出したときに、目に入るもの。
「ねえ」
と、香澄に声をかけて。
「あれは」
と、指差す先に、羽毛。
それは金色に輝き、ふわふわと宙に漂っている。ひとつだけではない、ふたつ、みっつ……、といくつか金色の羽毛が宙に漂っている。
「……」
香澄はその金色の羽毛を見据える。他の面々も、それに気付いて不思議そうにする。
「あの鳳凰の羽毛か」
志煥は鳳凰・天下を思い出していた。鳳凰と言えば吉兆の瑞相を現すめでたいものの象徴なのに、人を惑わせて自ら食われるように仕向けて、それを、鷺や鴇が水田で蛙でもついばむかのように、人をついばんで食らったのを見て。ただただ魂消た。
「天下が人を惑わし、食らう……」
絶句するしかないことだった。