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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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迷人悪夢

「その世界樹ってのがわかんないんだけど」

「いずれわかるよ」

 こんな時にも、世界樹の子どもは思わせぶりなことを言う。なにより、恐怖もなく香澄とともに平然としている。すべてを見通し、さらに結果もわかっているとでも言わんがばかりである。

「世界樹……」

 虎碧の脳裏にうっすらと何が浮かぶ。

「そういえば、私、なんか草原で一本だけ立っている大きな樹の木陰にいる夢を見たわ」

「そう、それ!」

 リオンが笑顔で応える。

(つまり青藍公主と公孫真さんのようなものか)

 貴志はそこに関しては合点がいった。

「頭がこんがらがるから、後にしろ!」

 源龍だった。酒樽にも違和感を感じ、志煥とともに人々を酒樽から遠ざける。羅彩女も、もう一隻の船に飛び移って、酒樽から人を追い払う。

 しかし他の船では酒樽に顔を突っ込んでごくごく飲む様が見受けられた。

 酒を飲んだ者はその場に倒れこんで、寝息やいびきをかいて眠り出す。それのみならず、なぜかその身から煙のようなものが浮かんで。さらに、その煙に何かが映し出されるではないか。

「やだ」

 虎碧は思わず顔をそむけた。煙の中では、人と人が真っ裸で絡み合う痴態が映し出されていた。その一方で、龍玉は「けっ」と忌々しそうに睨む煙があった。その煙には、金銀財宝を得て悦に入る様が映し出されていた。

 そして、痴態の相手や金銀財宝を、他人から無理矢理奪ってまで手に入れる様までもが映し出された。

「欲望か……」

 源龍は眉をしかめる。

 さらに、誰かが誰かを陥れる様が、役人に連行される誰かをせせら笑う、貧しきものが富める者に乱暴を働く、そんな様が映し出された。

「嫉妬?」

 羅彩女がそれを見て、ぽそりとつぶやく。しかしそれだけでもない。奪われた者が奪った者に報復をする様、騙された者が騙した者に報復をする様も。

「復讐……」

 貴志はごくりとつばを飲み込んでしまった。またさらに別では、夕暮れ時夕陽を背に、自分より弱い者を差別し、虐げる様が映し出された。身なりの貧しい者が同じように身なりの貧しい者を差別し虐げ、乱暴を働くところだった。さらに家族もなけなしの銭までも奪い去り、さらに命をも奪った。

「弱い奴が夕暮れ、さらに弱い奴を殴り殺すのか」

 源龍は忌々しくつぶやく。弱者がさらなる弱者をなぶり殺すのは、江湖では、市井の最下層ではよく見られる光景だった。

「ああ楽しかった」

 それは差別や加虐、そして殺しを楽しんでご満悦の相を見せていた。

 が、しかし……。

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