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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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迷人悪夢

 古来から化け物や物の怪の類は、人が逃げても隠れても追い込んでゆくが。人が発する臭いをたどって探り当てるとなれば。なるほど、逃げても隠れても詮無きことである。

 だからこそ、僧侶や道士のような宗教者や武林の武芸者が知恵を絞り力を合わせて化け物や物の怪を退治してゆく怪談話も多かった。ただし、抵抗虚しく物の怪にとり憑かれて亡者にされる悲劇怪談はもっと多かった。

 その蝙蝠の化け物は、ぎゃあぎゃあと耳を刺すような不快な鳴き声を上げている。下界の人間どもを見つけ、さあ急降下していただこうかと、殺気も感じられたが。

 そこへ突如飛び込む巨大な光。

 蝙蝠の化け物を巨大な翼で薙ぎ払い、嘴でついばみ飲み込みすらする。

 それはあまりにも巨大で、人が知る鷹や鷲の類ではなかった。もっと神秘的で、心に迫るものだった。

「鳳凰だ!」

「鳳凰が空を飛んでいるぞ!」

 そんな声があちこちから聞こえる。

 そう、それは鳳凰だった。金色の光を放ち、空にもうひとつ太陽が現れたかのような神々しさだった。

「ははは、天下がやって来たぞ! お前らの臭いにつられて来たのだ!」

「天下だって!?」

 あの、辰の宮殿で対峙した人食い鳳凰だというのか! 貴志は懐から筆の天下を取り出した。それから、これでが何の役に立つのかわからず、途方に暮れた。

 あの時、人食い鳳凰のまたの名を当て、それを書き出せば勝てた。しかし今度はすでに答えが出たから、そんな謎解きではないようだ。

 蝙蝠の化け物らは鳳凰・天下に食われ、あるいは追い払われて、ぎゃあぎゃあと悲鳴を上げて逃げ惑っている。それを見て、助けられたと安堵する人もいるが。

 源龍や貴志、羅彩女はそんな安堵はできなかった。龍玉と虎碧も得物を構えて身がすくむ思いをこらえている。

 香澄は落ち着いているものだった。そばの子どもたちも、鳳凰を見上げて、落ち着いたものだった。

「今のご時世、天下さんは好物をたらふく食えて、ご満悦そうですねえ」

 画皮がにやけて言う。貴志は眉をしかめた。

(って言うか、天下はこんな昔からいて、人を食っていたって言うのか!)

 自分たちが倒したのはその天下なのか。

 その鳳凰・天下は、下界を見下ろし、急降下をしたと思えば。海面に近づいたところで、翼をはためかせて。翼が起こす風で海面が揺れ、波が立ち。

 それから、まるで白鳥のように、翼をたたんで水面に浮かんだ。長い尾羽は凛々しく直立する。

「おい、これはどういうことだ。決着をつけるんじゃないのか!」

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