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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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迷人悪夢

 ぶうんと風の唸る音とともに、打龍鞭が人狼に迫る。それを、ひょいと軽く交わして後ろに跳躍し、一定の距離を開けて、双方対峙する。

 源龍支度を終えて、戦う準備万端。

「でも最近は、やけに臭くないですかね」

「いくさをしているからな、余計に臭うわ。臭くてたまらん」

 人狼は真面目に顔をしかめる。しかし、この物の怪同士の変な意気投合はなんだろうか。そして、臭いものというのが、人の心の奥底に潜む様々な欲求や欲望の類というのは、貴志と志煥には察しがついた。

「おい、早くこの物の怪を倒せ! 褒美はいくらでもやるぞ!」

 突然そんな声が聞こえた。資産家らしく、豪奢な服装をしてその資産の多さはそれだけでわかったし。褒美をやると言うのも、嘘ではないだろう。

「ふふふ、そう言っているぞ。よかったじゃないか、金儲けの機会ができて」

「へへへ、人間って金でなんでも解決できると思っちゃって。面白いですねえ。ひひひ」

 人狼と画皮どもは不敵に笑う。

「ああ、臭う、あやつの臭いがここまでくるわ。臭い臭い、臭くてかなわん」

 人狼は嫌味たっぷりに鼻をつまむ仕草を見せる。

「その臭い人間に食われて、臭い糞になるってのはどうだ」

 源龍が打龍鞭を構えて、一歩一歩じりじりと迫る。物の怪たちが臭いと言うものが源龍にはよくわからなかったが、そんなことはどうでもよかった。ただ人狼と戦い、これを仕留めることしか頭にない。

 貴志は離れ、香澄と羅彩女に龍玉、虎碧、子どもらは人々を守ることに神経を向け、いつでも動けるよう備えている。

「ふふふ、面白いことを言う。しかし、臭い糞になるのも、やはり人間さ」

「どういう意味だ」

「空を見よ」

 人狼は天向けて指を差した。

 隙を作らせて襲い掛かる意図はなさそうで、空を見上げれば。

「!!」

 さすがの源龍でも息を呑むものがあった。他の面々も空を見上げてみれば、唖然として言葉もなく息を呑む。

 漁村に着く少し前に、蜥蜴の顔を持つ蝙蝠に襲われたが。その蝙蝠の化け物が空に、百匹ほどだろうか、羽ばたいている。

「これは!」

 貴志は唸る。他の面々も戦慄が走る。一匹一匹はたわいもないが、数に勝られれば、衆寡敵せずで勝てないし。よしんば自分の身を守れても、ここにいる人々の犠牲は免れない。特に小さな子どもは格好の標的だ。

 だが驚きはそれでは済まなかった。

「人間は臭う。我ら化け物や物の怪にとっては、それがよい道しるべになるのだよ」

 と、人狼は言う。鼻をすんすん言わせて、得意満面だ。

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