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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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在海飄移

(お宝があったとて、これじゃ意味ないねえ)

 なぜ人は金銀財宝を求めるのかと言えば、それが生活用品に替えられるからだ。たくさんあればあるほど、生活が保障されることになる。だから、人は金銀財宝を求めた。

 しかし、こうして生活用品に替えることができなければ、いかに金銀財宝があろうとも無意味。

(儚いねえ)

 そう思わざるを得ない羅彩女であった。

 もっとも、この金銀財宝をたやすく使うことに貴志は反対をしていた。これは盗品であり、それを横取りすることに人としての心が許さなかった。

 気持ちを落ち着かせて周囲を見渡せば、他に船は十数隻ある。中には小舟を下ろし浮かべて、釣りをしている者もあった。

「そうだ、なんか釣り道具ありませんか。釣りならお手の物ですよ!」

もりでもいい、魚を獲る道具がありゃ、魚獲ってくるんですが」

 漁村の漁夫たちがそう言う。破壊をされたのもあって、船に漁師道具を乗せていなかった。が、道具さえあれば、彼らは魚を獲ることに関して玄人なのだ。

「あんたら漁師か、ちょうどいい手伝ってくれ!」

 船たちの中には漁船もあった。

「いくさで仲間たちが殺されしまって、少ない人数で逃げるしかなかったんだ。道具はある、手伝ってくれたらありがたい!」

「よしきた!」

 船を動かし漁船に寄せて、乗り移り。海面をじっくり見据えて魚影を見定め。ある者は釣り糸を垂らす。

「そこだ!」

 網を投げ落とす。手応えを感じて、網を引き揚げれば。魚がある程度でも獲れたのが見えて、喚声があがる。

 釣り組も、掛かりがよく、糸を引き揚げ魚を船床に置いてを繰り返し。魚はぴちぴち跳ねる。

 獲った魚は、漁船ですぐにさばき、バチで火を起こして焼き魚にし。それらがまとまった量になると、

「腹減ってなくても無理矢理でも食え! 腹いっぱいにしねえともたねえぞ」

 そう言って、漁船を動かし、配ってゆく。

「海じゃオレもただの素人だな」

 源龍もさすがに感心しながら、手渡された焼き魚を頬張る。

 とりあえずでも食事にありつけ、周囲は落ち着いた雰囲気になる。やはり空腹は人を弱らせる。

「いやあ、あんたたちが来てくれて助かったよ!」

 もとの船に戻った漁師たちに感謝の言葉を掛けられる。この中で魚が獲れる者はいなかったようで、本当に丁度良かったのだろう。

 落ち着いたところで日が暮れる。魚を食せたことで船の備えの食料に手を付けずに済んだという安堵感も大きく、それなくして夜を迎えたら、どうなることやらだった。

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