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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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在海飄移

 源龍は子ども数人にまとわりつかれているではないか。

「追い払っても追い払ってもしつこく迫ってきやがる。ほら、オレよりあのお姉ちゃんといたほうが面白いぞ」

 源龍は子供に迫られて弱っているようだった。強気で意地っ張りな男で、玄人の戦士でもあるのだが。戦いがない時の源龍には気迫が感じられないのか、子どもが遊んでよと寄ってたかってくる。中にはいきなり足からよじ登って、

「だっこして!」

 と言う剛毅な子どももいた。親も恐れて子どもを源龍から引きはがそうとするが、

「やだ、このおじちゃんと遊ぶの!」

 と、なぜが強情に源龍に遊び相手を求めた。そのうち数人は、世界樹の子どもとリオン、羅彩女と龍玉に、貴志、さらに志煥が引き受けてくれたが。まだ全員とはいかず。

 残りの子どもは香澄と虎碧に引き受けてもらおうと船室に駆け込んだ次第、というわけだった。

「ふふふ」

 香澄と虎碧はそろって笑みをこぼした。

「おい、笑ってねえでなんとかしてくれ」

 そう言っている間に背中に子どもがしがみつく。勝手にくっつな! と声をあげるも、なぜか子どもは怖じず、やだ、遊んでとのたまう。

「はいはい。おじちゃんいやがっているから、私のもとにいらっしゃい」

 香澄が優しくそう言えば、子どもたちはその声にぴくりと反応して、

「はーい」

 と香澄のもとまで駆け寄り、円になって囲んだ。虎碧はその様子を目を見開いて驚きつつ見守った。

 その隙に源龍は部屋から出て、跳躍し船橋の屋根の上まで飛んで。そこでやれやれとごろんと寝ころんだ。

 幸い好天にして、屋外で寝るのも心地よい。

「なんで源龍はあんなに子どもに好かれるんだろ?」

 羅彩女は不思議そうにしながら、引き受けた子どもをあやす。貴志も頷き同じく不思議がる。

「この御仁は強く頼もしそうで、根は善良なのでしょう。子どもは本質を見抜きますからな」

「そんなもんですかねえ」

「ははは。子どもを侮ってはいけませぬ」

 子供をあやす志煥の顔は穏やかだ。久しぶりにひと息付けたといったところか。

「子どもは宝です。未来です」

 そう語る志煥の顔は輝いていて、子どものようだった。

 ……が、

「源龍に甘えるってことは、守ってほしいという願望もあるのかも」

「私に力がないばかりに、この人たちに故郷を捨てさせることになってしまった」

 貴志の言葉を受け、志煥は申し訳なさそうに言う。この事態の責任を感じているようだ。

(まあー、ほんとにいい人だねえ。お上がこんな人たちばかりなら、あたしら庶民は苦労をせずに済んだろうに)

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