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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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悪夢戦闘

 これも効いたか刑天の悲鳴は一段と高まった。と、いうことは、やはり手で耳をふさがないといけないということだった。

 その悲鳴のひどさ、空気を震わせて、空間を歪めそうな違和感だった。

「まったくこれはひどい。悲鳴に手こずるなんて、やはり人外の化け物だ」

 貴志はなすすべなさそうに手で耳をふさぐしかなさそうだった。

「そうか、足か」

 源龍は貴志と同じように、手で耳をふさいだままで、打龍鞭を蹴り上げ宙に浮かせた。一見簡単そうだが、持ち主の背丈と同じ長さと幅は拳大の鋼の塊の重さは相当なものだ。それを蹴り上げて宙に浮かせるなど、並の人間が簡単にできることではない。

(彼も、人間なのか?)

 貴志はふとそんなことを考えた。宙に浮いた打龍鞭を源龍は思いきり蹴飛ばした。打龍鞭は刑天めがけて飛んで、右胸の右目に当たりそうだったが。とたんに悲鳴がぴたりとやんで。

 大斧を振るって、迫りくる打龍鞭を打ち返した。

 打ち返された打龍鞭はまっすぐ崖に飛んで、半分くらいまで突き刺さったではないか。

「な、なんだとッ!」

 あれだけ痛そうにして何もできなさそうにしていたのに。あれは油断させるための演技だったのか。

「くそ!」

 源龍は突き刺さった打龍鞭を抜こうと駆けようとするが、そこに大斧が迫る。

 ぶうんぶうんと唸りを上げて、大斧は源龍を打ち砕こうと迫り。得物を抜くどころではないと、身をかわすしかなかった。

「刑天、僕がいるぞ!」

 貴志は源龍が打龍鞭を抜けるいとまをつくろうと、我が身をさらし刑天の気を引こうとする。

 石も拾っては投げつけた。が、当たっては何事もなさそうに跳ね返されて、虚しく落ちるばかり。

 だが気を引くのはうまくいったようで、刑天は大斧を振りかざして貴志に迫った。源龍は打龍鞭の柄を握り抜こうとする。

「くそ、食い込んでやがる!」

 抜こうとするも、びくともせずなかなか抜けない。

 貴志は距離を詰められないように駆けて、駆けながら石を拾い崖を駆けのぼって。跳躍して、首の切れ目の骨めがけて石を投げた。

 石は見事命中し、刑天は動きを止めてまた悲鳴を上げた。

「うわ、やっぱりきついな」

 着地しざまに貴志は手で耳をふさいだ。源龍もそうしたいが、我慢して打龍鞭を抜く。

「ん、んん?」

 打龍鞭の突き刺さったところから、にわかにひびが走り、それは四方八方にひろがってゆく。と同時に、あれだけ食い込んでいたのが、すぽっと抜けた。

「こりゃやべえぞ!」

 源龍は打龍鞭を担いで駆け出し、貴志のそばを駆け抜けざまに、

「崖を駆け上がれ!」

 と大声で言いながら、打龍鞭の突き刺さっていたところを指さした。


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