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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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在海飄移

 虎碧も船に乗る。漁夫が舟を漕ぎ出し、沖の船に向かい。船に着いて移り乗って、虎碧も船に乗りそこの護衛に当たる。

 漁夫と香澄だけになって、浜辺に戻って……。小舟で行ったり来たりしながらを繰り返して、漁村の人々を船に乗せて。

 男ども、一番最後の源龍と貴志に志煥も船に移ったころには、日は暮れて夜の帳が下りていた。

 ともあれ、時間はかかったが、無事全員船に移ったわけだ。それから改めて貴志たちは志煥に名を名乗った。

「わあ」

 子どもが声をあげる。

「まんまるお月さまがきれい」

 夜空には満月が浮かんでいた。月光が夜空に降り注ぎ、海に光の道をも示していた。

「この月光に乗って月に行けそうだね」

 子どもたちはそんなことも言う。不安な気持ちがあったが、幾分がほぐれたようだ。

 世界樹の子どもとリオンはその子どもたちに着いてあげて、一緒に月を見上げて、きれいだねと頷き合っている。

 その親たち大人らは源龍や羅彩女たちにしきりに礼を言う。

「夜空の月や星々が美しいですな」

 志煥はひと息ついたと、安堵のため息をつきつつ、夜空に見惚れる。木っ端役人には柄の悪い者が多いが、彼は柄も良く、教養も備えているようだ。そんな者がどうして小さな漁村で木っ端役人をしているのか。

(色々あるんだろうな)

 と、貴志は思った。

 政治におけるどろどろの、難しい権力がらみの事や人間関係は、いかなる者とて逃れることはできない。むしろ人格者だからこそ、陥れられるのだ。欲望や嫉妬の力は、夢や理想の力を超え、世を暗雲で覆うことも人の世では珍しい事ではない。

 だからこそ、権力者に頼らず自分たちで生きようとする人々が生きる世界、江湖ができた。

「生まれた国よりも自分自身を持て」

 そんなことを言った女王がいたのを、ふと思い出した。ともあれ、ひとまず一晩休んで。夜が明けてからリオンが船を動かす手筈となった。

 人々は思い思いに雑魚寝をする。女や子どもは羅彩女たちが着いて船室に、男は外に。幸い雨が降る様子もなく、夜空は晴れ渡って月や星々がきらめいている。

 源龍は打龍鞭を担いで、船橋の壁にもたれて上半身を起こし。いつでも立ち上がれるように備えて寝て。貴志も同じように背を壁にもたれかけさせて、上半身を起こして寝た。

 あの人狼や画皮どもがいつ再来するのか。その警戒も怠れない。

 幸いにして何事もなく夜は明けて、月や星々に代わって太陽が登った。

 リオンはむにゃむにゃとなにやら唱えて。船は波を蹴って海をゆく。

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