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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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超越時空

 皆もつれ合うようにしながら外に出て、それぞれ対峙し睨み合う。

 先ほどと変わらぬ青空。海も波も穏やかで船の揺れも少ない。雰囲気にそぐわぬ好天である。

「狼野郎みたいに暗くしないのかい?」

「我らにはそんな能力はない。しかし……」

 阮撰は虎碧を忌々しく睨む。

「よく気付いたな。その碧い目には魔力が秘められているのか」

「そんなものはないわ、でも、その人の腕の皮が変にめくれてておかしいと思ったの」

 皆の視線が虎碧に集まる。

「ち、この間抜けめ!」

「申し訳ありませぬ」

 阮撰は怒鳴って、中身は頭を下げ謝罪する。滑稽な場面だが、笑う気にはなれなかった。

「あっはははは!」

 笑いどころではないと思いつつも大人と違い子どもたちは笑いをこらえられなかった。それどころか、

「うふふ」

 香澄も口を締めようとしつつも締めきれずに笑いをこぼしてしまう。

 龍玉と虎碧はぽかんとし、源龍と貴志、羅彩女は苦笑する。

(まあこいつららしいことだな)

 おかげで場がいくらかほぐれた。

「お前らはあの狼とは違うな」

「は、一緒におしでないよ!」

 羅彩女はイキる。気持ちで負けちゃだめだと。

「あの狼野郎は人間の盗賊みたいなことをしてこの財宝を集めて、人間みたいに金持ち気分で優雅な旅を楽しんでいた。まったく変わり者の物の怪だった」

 聞いてもいないが、阮撰は語り出し、とりあえず一同話を聞く。

「何の縁か、巡り合わせか、人間どもに紛れていた我らと出会い。金で雇われてやった。恐れるふりをして仕えてやったが、ふふふ、あやつ何も気付かずにいい気になって我らをこき使ったものよ」

「これもこれでよく理解できない話だな……」

 貴志は眉をひそめる。物の怪が物の怪に内心で舌を出して侮っていたなんて。なんとも、

「人間臭いなあ」

 と、ぽろりとこぼす。羅彩女は疑問に思うことがある。

「でも、殺された者もいるって」

「いる、しかしまあそれは、殺されたそいつが間抜けだったということだ」

「さすが物の怪だね。仲間が殺されても平気なんて」

「人と物の怪は区別できるものなのかね?」

 阮撰及び他の水夫も皮を脱ぎ出し、中身をさらけ出す。さらけ出して、阮撰だった画皮はすかさず語る。

「この世は魑魅魍魎に溢れている。人間もその中のひとつだよ」

「むむむ……」

 意外に哲学的なことを言うものだから、貴志は驚きを禁じえず、言葉を詰まらせてしまった。

「御託はいい!」

 ぶうん、と唸る風音。源龍はしびれを切らし、打龍鞭を振りかざしたのだ。

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