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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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超越時空

 香澄と子どもたちは、無言で成り行きを見守る。

 虎碧は周囲を見回す。阮撰や水夫たちはにこにこと愛想のよい笑顔を向けている。財宝を見慣れているせいか、自分たちのように緊張すら覚えるというような反応は見受けられない。

「……」 

 嫌な予感がするなあ、と口元を引き締める。

「ってゆーかよう」

 源龍だった。同じように、

「疑問もありますが」

 と貴志は言う。羅彩女も浮かれていたが、ふと、変に冷静さを取り戻して。龍玉もそれらの面持ちを見て、何かを察して気が引き締まった。

「あの狼野郎……、張大尽のお宝をお前ら見慣れているみてえだな」

 数々の修羅場を切り抜けた源龍であった。貴志も思わず感心する鋭さを見せる。

「怖いご主人さまはそんなにお宝を見せてくれたのか?」

「……う、それは、ここに連れてこられて見せつけられたのです。見せるだけで指一本触れさせてもくれませんでした」

「阮撰さんはともかく、他の水夫の人も?」

 貴志の言葉に水夫たちは頬をぴくりと少し一瞬動かす。見せつけられていたから見慣れている、というより、これだけのお宝を目にしても平然としていられるなど、あるのだろうか?

 少し分け前をもらえないかと期待したりして、少しばかりそわそわしたりするのではないのか?

「……」

 虎碧はふと、ひとりの水夫の腕を見て。素早く剣の柄を握ったかと思えば素早く抜剣し、水夫の腕に斬りつけた。

 風を切る音が皆の耳を突き、さらに水夫の叫びが響いて。腕の皮がぺらりとめくれて、真っ黒な異物としか言いようのない見た目の腕がむき出しになる。

画皮がひね!」

「くそ、この小娘!」

 異物な腕むき出しの水夫は、皮を引っ張って、まるで服を破り脱ぐように皮を服ごと破り脱いだ。

 それは人の姿ではなかった。皆金銀財宝には目もくれず、その中身に度肝を抜かれた。

 黒く太く長いミミズがあつまって人の形をなしたような、異物あるいは怪異そのものの姿だった。ミミズがあつまってできたような姿ながら、目鼻口に耳もそろっている。一本一本がそれぞれ別個の生き物のようにびくびくとうごめいてもいた。とにもかくにも気持ちが悪いと思わずにはいられない姿だった。

 これでどうやって生体と生命を維持しているのだろうと貴志は疑問に思ったが。物の怪や妖魔の類は人のような構造ではないのだろうと思うしかなかった。

 香澄は素早く駆けて、倉庫の出入り口の扉を開ければ。皆も素早く駆け出し。それを邪魔しようとする水夫や阮撰らを虎碧が食い止める。

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