表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
162/539

超越時空

「なんだいありゃ……」

 龍玉と虎碧はぽかんとして。源龍は水瓶まで駆けて、うがいをする。

「ひとまず、あたしら無事みたいだね」

 羅彩女はあらぬ成り行きに苦笑する。リオンを見ながら。この子にお願いして船をまた別のところに飛ばしてもらったらよかった。次からそうしようと考えた。

 貴志も苦笑しつつもとりあえずの無事を喜び。世界樹の子どもとリオン、香澄は互いに笑顔を見合わせた。

「張大尽が……」

 従者や水夫たちは唖然としている。

「あんな物の怪だったなんて」

 どうやら知らなかったようだ。人間界に紛れ込んで、どのようにしたのか金を稼いで大尽となり、船の旅を満喫していた、というところか。

「あ、ありがとうございます!」

「わ、なんだ!?」

 従者と水夫たちは、一斉に跪いて、大声で礼の言葉を述べる。うがいをしていた源龍は予想外のことに水を噴き出し。貴志と羅彩女はそっちに大層にに驚いてのけぞり。子どもたちと香澄もさすがにぽかんとし。龍玉と虎碧はもう心ここにあらずで呆然とするしかなかった。

「張大尽は恐ろしいお方。実際機嫌を損ねた者がまるで蟻のように軽く殺されるなどしました。その張大尽からいなくなってくれて、我らも大助かりです」

「なんだって?」

 いつの間にか羅彩女は皆の代表のように前に進み出て、従者の話を聞く。戻って来た源龍と貴志らは彼女の押し出しの強さに思わず感心し、この交渉を任せてみることにした。

「あの狼野郎は正体を隠して、あんたらをこきつかっていたってわけ?」

「そうです。私たちはいつ機嫌を損ねて殺されるか、びくびくしながら仕えていました」

「で、この船はあの狼野郎の?」

「はい。昔山賊や盗賊の類でひと儲けしたとうかがっております。我らは後から雇われた者で、昔の事は詳しくありませんし、話してもくれませんでした」

「もうとにかく、張大尽は恐ろしかった! 解放されてよかった!」

 従者の言葉の後に水夫が感情を爆発させるように叫んだ。よほどのことだったのだろう。

「まだ解放されたと決まったわけじゃねえぜ。あいつまたオレとやりあうつもりだからな」

 口内の不快感や気持ち悪さが残ったままながら、うがいをしてひとまず安心した源龍は冷たくもそんなことを言う。

「あんな物の怪野郎だ。お前らが逃げても追いかけてくるだろうよ」

「そ、そんな!」

 従者や水夫は恐慌し、哀れみを帯びた目でこちらを見てくる。その様子に貴志は苦笑し、羅彩女は何かを考えている様子だし。他の面々は成り行きを見守るしかない様子だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ