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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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超越時空

 狼は源龍に覆いかぶさり。打龍鞭を放してその首を両手でつかん牙剥き出しの大口を目前で止める。

 その間に人狼も迫り、貴志はその人狼に向かう。

 しかし、双方足が止まった。

「なんて奴だよ!」

「むむむ、どちらが狼で人か、あべこべではないか」

 源龍は大口を開けて、狼の喉笛に噛みついたのだ。硬い毛が口内に入り込み、咳きこみそうになるのを堪えて、顎に力をくわえて噛み千切ろうとする。

 貴志と人狼はその光景にさすがに驚きを禁じえず、思わず唖然と眺めるしかなかった。

 ぎゃいんっぎゃいん! と狼はたまらず悲鳴を上げて。しかし源龍は放さず。

 狼の力が抜けたのを見計らい、片手で狼を捕まえ、片手で打龍鞭を取り。口を開けて放せば、狼はたまらず逃げ出し背中を見せ。その一瞬の間に打龍鞭がぶつけられて、狼はたまらずぶっ飛んで。地面に叩きつけられたが。

 今度はぴくりとも動かなかった。

「ぺッ、ぺッ、ぺッ」

 源龍は立ち、口内に入り込んだ狼の剛毛を唾と一緒に吐き飛ばす。

「あー、ダニやノミもいるかも」

 リオンは呑気に言う。しかしあり得る話だ。それを聞きさすがに源龍も気持ちが悪くなった。

「水はないのか!」

「この時空なんとかしなきゃダメみたい」

「ざっけるな!」

 源龍は滅茶苦茶に切れまくって怒鳴ったが。それを見て人狼は、

「失敬な! ダニやノミなどおらぬわ!」

 と怒鳴り返す。

「なわけあるか! 人間にもいるんだぞ、狼にもいるだろうが!」

「私を誰だと思っている!」

「妖魔天魔の類にもついてるだろうが!」

 そう怒鳴り合う間も、もう一方の狼同士の取っ組み合いは止まらないが。人狼が口笛を吹けば。肩から出た狼は一瞬の隙を突いて離れて、主の足元まで駆け戻った。鬼の狼も羅彩女の足元まで駆け戻った。

「むう、この私にダニやノミがいるなどと……。これ以上の侮辱はない!」

「だったらなんなんだ? ぶっ殺し合うのはかわらねえだろうが」

「いいや、それはまた後日。ダニやノミなどおらぬしるしに、数日間を開けよう。お前には何もない。それからまた改めて」

「はあ、なんだそりゃ?」

「とにかく、お前になにもないことが証明されてから後日改めてということだ!」

「ふざけんじゃねえ、逃げるのか」

「ふん、うるさい奴だ。とにかくまた後日だ!」

 途端に竜巻のような強風が起こったかと思えば、闇は払われて。なんと人狼は狼とともに宙に浮くではないか。

 完全に闇が払われて、月もどこかに吹き飛ばされて。大空の下の大海原に浮かぶ船に戻って。空を飛んで去ってゆく人狼と狼を見送った。

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