超越時空
人狼も、
「上等」
と一歩進み出て、源龍と対峙し。
「いくぞッ!」
張こと、人狼向かい駆け出す。
打龍鞭が上段から迫る。しかし人狼は避けようともしない。右腕を伸ばし、はっしと掴むではないか。すかさず下段から強烈な右脚での蹴りが繰り出される。この時になってようやく打龍鞭から手を放し、素早く後ろに下がって距離を取る。
「遊んでくれるな」
「ふふふ、そう簡単に殺してはつまらない」
互いの殺気迸る視線が火花を散らさんがばかりに交わる。
龍玉と虎碧は距離を取り身構えながら、様子をうかがう。
(一体これは。どうしてこんなことに巻き込まれるんだろう)
虎碧は強い緊張感の中で疑問を膨らませる。龍玉もへらず口はたたかず、静観するしかなかった。
(虎碧はどうして目が碧いのか教えてくれない。ほんとに言いづらい深い事情があるんだね)
人狼から何か言われて、「やめて!」と叫んだ。こんなことに巻き込まれるような何かが、その碧い目に秘められているのか。と薄々なにかを察するような気持になる。
源龍と人狼は対峙し、今度は互いの隙をうかがって動かない。軽口もたたかない。
「今度は私からゆこう」
腕を後ろで組んで、余裕を見せて歩き出し。さあ打って来いと目で語り。それなら遠慮なくと、源龍も打龍鞭を振るった。
すると、両肩から生えるふたつの狼の首が伸びたと思うや。なんとそれぞれ一頭の狼となって飛躍し、源龍に襲い掛かる。
「何ッ!」
上方から迫る狼を打龍鞭で払おうとし、羅彩女は咄嗟に鬼の狼に「ゆけ!」とけしかけ。
一頭は打龍鞭で打ち払われて地面に叩きつけられて、もう一頭は鬼の狼がぶつかり。ごろんごろんと転がりながら牙を剥きだしに激しく取っ組み合う。
「……うおおッ!」
狼にかまっている間に隙を見せてしまい。人狼の拳が源龍の頬をしたたかに打った。
思わずめまいがして、よろけ。それでも打龍鞭は放さず、「くそ!」と横薙ぎに振るった。
人狼は素早く跳躍し後ろに下がるが、源龍は振るった打龍鞭の勢いに乗せられて、振るったなりに回って、そのまま尻もちをつく有様。
拳ももろに受けてしまったために、痛手は大きい。
「なんだあれは!」
「卑怯よ!」
貴志は驚き羅彩女は抗議をし。鬼の狼はもつれあいは止まらず。もう一頭がすかさず起き上がって源龍に襲い掛かった。
「手ぇ出すな!」
貴志が駆けようとするのを源龍は止めた。しかし貴志は止まらない。このままでは源龍はやられてしまう、と思うと止まれない。