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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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超越時空

 羅彩女は無遠慮に言う。男は変に不敵な笑みを浮かべながら、女たちをじろじろと眺めていた。

(あ、やばいかな?)

 羅彩女もさすがに危険を感じた。虎碧と香澄は演技を続けているが、龍玉はとうにやめて鋭い視線を送っている。

「臭うぞ」

「え?」

 男はにたにたと不敵で不気味な笑みを浮かべて言う。

「オレもお前たちも、不思議の存在。ひとつ遊ぼうではないか」

「何を言ってんだい。頭おかしいの?」

 羅彩女は男にいらついてついに怒鳴り声をあげてしまった。同時に、

「言わんこっちゃない!」

 龍玉も血気に逸って剣を抜いてしまった。

「あんたたち、物の怪であたしらをはめようとしてるんだね!」

 虎碧の手を取って、距離を取る。世界樹の子どもはほったらかしだ。小さな子どものなりをしているが、正体はとんでもない物の怪、人にあらざる者ではないかという疑念はますます深まる。

「男など隠して。美人局でオレから金を巻き上げるつもりだったのか。……出てこい、男!」

 男が言えば、源龍と貴志が飛び出すように姿を現す。羅彩女は恐慌を隠せず、頭を抱える。

 世界樹の子どもとリオンは顔を見合わせて苦笑いする。

(これも世界樹の思し召しだね)

 と、小声でひそひそ話をする。そんな子どもらを男は眺めて、ふふと嘲るような笑みを浮かべる。

「ご主人様!」

 渡し板を渡って、男の従者らしき初老の男がやってくる。水夫らは船に残ったままだ。

(おかしいな)

 水夫の様子を見ると、どうにもこの貴公子風の男とその従者に対してなにやらただならぬ思いを抱いているようだ。例えば、恐れとか。それは畏敬の念とは違う、いやいや一緒にいるというか。

(これはなにかあるな)

 得物といえば筆の天下。さすがに武器にあらざるものは使えないので、気を張り巡らせて臨戦態勢を取り身一つで戦うことを覚悟する。

「オレは戦うことしか知らねえが、美人局なんざきたねえことはやらねえ!」

 源龍はかっかし、男を見据える。打龍鞭を肩に置きながらも、いつでも飛び出せるように身構えている。

「ふふふ」

 しかし男は、不敵に笑う。水夫はそんな男を「張大尽さま」と呼んで、「いかがなさるのですか?」と問うが。

「しばし遊ぶゆえ、その間休んでおれ」

 などと返す。貴志は水夫の声がわずかながらも震えていることに気が付いた。やはり彼らは男、張大尽を恐れて、仕方なくこの航海の旅に付き合っているようであった。

「オレが人にあらざる者なら、お前たちはこの世にあらざる者か。臭う、臭うぞ」

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