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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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超越時空

「ってゆーかよう」

 源龍は言う。

「お導きに従って戦ってやってるんだからよ、報酬があったっていいじゃねえか」

 そんな源龍のこぼしを、子どもたちと香澄は微笑みながら受け流す。

「そうだね、わけもわからないまま試練ばかりに遭わされても」

 貴志も同調し、羅彩女もうんうんと頷く。

 龍玉と虎碧はそれをぽかんとしながら眺める。意味は分からないが、愚痴をこぼすなど変な天魔だと。

 龍玉と虎碧は、放っておかれた。なにやら尋問でもされるのかと思ったが。それどころではないと思ってなのか、相手にされない。

(色々聞こうと思ってたけど。なんか、面倒臭いなあ。後にしよう)

 とそれぞれがそんな一致した気だるい思いをしていたのが実情だ。

「あ、船が見えるよ!」

 もはや手も握ってもらえない世界樹の子どもは、遠くに船を見つけて皆に教える。

 世界樹の子どもは龍玉と虎碧に対し、なぜそんな世界樹の子どもという名乗りなのかという疑問も抱く気もないのが気がかりでもあったが。

 やはりこれも、

(世界樹の子どもなんて奇妙な名乗りだけど、なんか問いただす気力もない……)

 と、後回しにされていた。

 一同は世界樹の子どもの指差す先を眺めた。

 憎たらしいほどに太陽は輝いている。大海原は、波は陽光を受けて同じように輝いていた。

「どこの船? 巍? 白羅?」

 龍玉はぽそっとつぶやいた。それを聞いた源龍と貴志、羅彩女は、はっとする。そうだ、今はいつなんだ。なぜ巍や白羅という昔の国名を彼女は口にするのか。

「あの、巍とか白羅とか、今はいつなんでしょうか?」

 貴志は思い切って質問をしてみれば、龍玉と虎碧は、何を言っているんだと言いたげにあからさまに貴志を怪しんだ。

 龍玉は鋭い視線で貴志を見据え、腰の剣を引き抜き臨戦態勢をとる。虎碧も抜剣こそしないが、いつでも戦えるよう身構える。

 香澄は右手を挙げて源龍と羅彩女に「落ち着いて」と諫める。子どもらは様子を見守る。

「どうにも怪しいと思っていたけど、今がいつだなんて変な質問をするなんて。あんたらほんとうに人間かい?」

 龍玉の頬を汗がしたたり落ち、整った顎に伝って落ちる。彼女も極度の緊張の中にいる。虎碧も同じ。

(私たちは異界に迷い込んだのかしら?)

 依頼を受けて天頭山に登ったものの、そこで異界に迷い込んで、今に至っているのかどうか。そもそも船が天湖にあり、次に海上にあるということ自体が、人の世ではあり得ぬ話ではないか。

 ふたりの様子から信じられないのも無理はないと貴志は思った。

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