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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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超越時空

 船は飛ぶ、空を航空する。

 苦労して登った天頭山が遥か眼下に見下ろせるが、ふたりに下を覗く余裕はなかった。今までの疲れがどっと出て、ただ座り込むしかできなかった。

 しかし外は寒い。風も強い。

「中に入るといいわ」

 香澄がふたりに言うが、素直に従ってくれない。

「……」

「……」

 黙って、様子をうかがっている。それを見て、世界樹の子どもは、

「なんなら僕が人質になるよ」

 と二人に近づく。相手に安心をしてもらうために、敢えて人質を買って出たわけだが。子どものくせに聡い世界樹の子どもである。ふたりは危険人物ではないと、見抜いているようだが。

 しかしその確信はどこから来るのか。やはり世界樹の子どもだからだろうか。そもそも、源龍と貴志、羅彩女にとっては子どものことをよく理解できていない。

 世界樹の分身とでもいおうか、とにかくもとらえどころがない。

 ともあれ、世界樹の子どもに続き、リオンと香澄が、害意はないとふたりに話しをして。いつの間にか、羅彩女は倉庫から菓子を持ってきた。

「腹も減ってるだろう? 言うこと聞いてくれたら、食わせてあげるよ」

 不敵な笑みを浮かべれば。ぐう、と青い服の女の腹が鳴り。

「わかった言うことを聞くよ」

 と言い、次いで、

「でも、なんでもってわけじゃないよ!」

 と、男どもを睨む。ことに、

「あたしはともかく、この子に手を出したら……」

 とまで言う。それに対し、世界樹の子どもは、

「立場を同じくするために、僕が人質になるんだよ」

 と言う。青い服の女は、ふむと頷き。こっちに来なと、手をつかんで引っ張る。それを見て、赤い服の、碧い目の少女は、それを見て諫言する。

「龍お姉さん、乱暴しないで」

「大丈夫だよ虎碧、まさか取って食うまではしないよ。……じゃああんたが面倒を見たらいいや」

 青い服の女は少女を虎碧と呼んで、少女は女を龍お姉さんと呼んだ。どのような関係なんだろうか、感じからして姉妹のようだが。龍と虎である。もしかしたら親しさが高じ義姉妹の契りをかわしたのかもしれない。ともあれ、それも含めて色々と追々話を聞いてみようと皆思った。

 世界樹の子どもは少女に託されて。

「ごめんなさいね、しばらく一緒にいてね」

 と優しく手をつなぎ。人質なのに、世界樹の子どもはまんざらでもなさそうだった。

 こうして皆は船室の中に入った。

 船室の中は調度品もあり倉庫には食料など備蓄品もあり、長い間生活もできるようになっていた。しかし寝台はなく、寝る時は風呂敷を布いての雑魚寝だが。

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