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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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超越時空

(自分たちだけでさっさと逃げられない。そういう人たちなんだよねえ)

 世界樹の子どもも、臭いを我慢しながら様子を見る。香澄は黙して語らず。

「……。この臭いは何ですか?」

 碧い目の少女が貴志に問いかけ、貴志は火山の噴煙や瘴気について話した。

「だからふもとの人は止めたのね……」

 碧い目の少女は青い服の女に語り掛けた。大陸部の言葉だ。こうしている間にも臭いはだんだんきつくなり、呼吸もかなりしづらい。

 標高も高く、今から下りたとて間に合うかどうか。

「大噴火から百年経っても、まだ危ないってわけね」

 青い服の女もたまらず剣を鞘に納めて、口と鼻を掌で覆うが。呼吸はしづらく咳やくしゃみが出る。

「この船にお乗りなさい。飛んで逃げるから。細かなことは今は考えず、僕らを信じて」

「……」

 碧い目の少女と青い服の女は警戒を解き切ることはなさそうだが。互いに頷き合い。

「わかりました」

 と少女は応え。貴志は頷き。それぞれ跳躍して船に乗った。

 ふたりの身のこなしから、羅彩女が玄人だと言った通り、それなりに武芸の心得があるようだった。

(青い服の人は、大噴火から百年と言った……)

 船に乗りながら、貴志はふたりの言葉から、どうにも物の怪に化かされたような気持ちを禁じ得なかった。

 自分たちは今たしかに天頭山の山頂の火口にいるのだが。

 それにふたりとも、容姿は端麗といってもいい見てくれだ。しかし、それは仮の姿で本来はあらぬ化け物、画皮がひ(人の皮を被り人に化ける物の怪)の類かと思ったりもした。

「皆乗ったね、じゃあ船を飛ばすよ!」

 リオンは座り手を合わせて、なにやらむにゃむにゃと呪文らしきものを唱えれば。船床が揺れた、と思えば。船そのものが宙に浮き、高度を上げて、ついには天頭山の火口をはるか下に見下ろせるところまで上がった。

「なにこれ!」

 ふたりはたいそう驚き、尻もちをついてしまった。しかし、

「あ、臭いがしない!」

 船は鳥のように飛び、天頭山・火口から離れて。臭いもなくなり、呼吸もできるようになった。

 すうはあすうはあと皆深呼吸をして、空気の美味さに改めて感謝した。

「とりあえず、海の遠いところまで行くようにしたからね」

 リオンはひと息ついた表情で言った。こういう風に航空し、遠海の丁度良いところで着水せよという命令を船に読み込ませることができるのだと言う。

 中途半端に近いところだと、沿岸警備の水軍に見つかる恐れがある。

 女ふたりは尻もちをついてから、座り込んで、茫然としている。それもそうだろう、船が空を飛ぶなど、想像を絶している。

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