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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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超越時空

「なんか臭いねえ」

「何の臭いかしら?」

 女二人もそんな会話をしている。天頭山教を信仰する山の民なら、火山のことは知っているだろうから。このふたりはそうではなさそうで、火山の知識なしに登ってきたようだ。

「どうする?」

 リオンと世界樹の子どもは船上からふたりを見て、香澄らに問いかける。

「助けよう」

 貴志はふたりのもとまで歩く。駆けない。駆けて呼吸が深くなれば臭う噴煙を吸い込む量が増えてしまうのだ。

 ふたりは自分たち向かい歩み寄る貴志に用心する構えを見せた。

「お嬢さん方、ここは危ない。今から逃げるから、僕たちと一緒にこの船に乗りましょう」

 と呼びかけて、少女の方を見て、はっとする。ちなみにまず暁星・朝星半島の言葉で。

 少女の目は、碧かった。異なる民族の混血のようだった。

「その言葉遣い、あなたは白羅ペクラの方?」

 碧い目の少女が朝星半島の言葉で語り掛ける。が、白羅とはこれいかに?

「……?」

 何を言っているんだ? 白羅? どういうことだ? このふたりは正気か?

 と、頭の中は不思議な疑問で埋まる。

 源龍と羅彩女は言葉がわからないので、どんな話なのかわからない。しかし臭いはだんだんきつくなる。

「おい、ぼやぼやするな! 船に戻るぞ!」

 源龍が叫ぶ。もちろん辰、大陸部の言葉。

「巍人か!」

 青い服の女が腰に佩く剣を抜き、臨戦態勢をとるが。「巍人か!」は大陸部の言葉で言葉を発した。

 ふたりの発した言葉に、貴志はおおいに困惑を禁じ得ない。

(白羅に巍って、どういうことだ?)

 まさか光善女王クァンソンヨワン翼虎イグホ伝説の時代に飛ばされたとでもいうのか。しかしそんなことありえない。

 ともあれ、源龍の発した大陸部の言葉に警戒を抱いたのは間違いない。しかし女も大陸部の言葉で「巍人か!」と発した。

 いや、考えるのは後だ。

「と、とりあえず、何も言わずに黙っててくれないか。このふたりを説得するのが先だから」

「わかったよ。源龍も余計なこと言わない」

「わあったよ」

 そういう間も噴煙、瘴気の臭いは漂い。掌で口と鼻を覆わざるを得なかった。碧い目の少女と青い服の女も、臭いのきつさは同じで。貴志らを警戒しつつも、戸惑いは隠せないようだった。

「ここは危ない。悪い事は言わないから、僕らと一緒に逃げよう」

 朝星半島の言葉も大陸部の言葉も通じるようだが、巍人か、と言った時の女の顔が険しくなったのを考えて、朝星半島の言葉で語り掛けた。

(ふたりを置いてさっさと逃げることもできるんだけどなあ)

 リオンは臭いを我慢しながら様子を見守る。

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