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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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超越時空

 船は天頭山頂チェトゥさんちょう天湖チェホにあり。

 一度脱したる天湖に、夢から覚めれば、またいるのである。

「これは夢か」

 源龍げんりゅう李貴志イ・フィチ羅彩女らさいにょは、香澄こうちょうと子どもたちに詰め寄った。

「夢じゃないよ」

 世界樹の子どもとリオンはにこにこして言い。香澄は子どもらのそばでたたずみ、静かに微笑む。

「むう」

 源龍は得物の打龍鞭だりゅうべんを握りしめる。

 それぞれ服装は夢の中と同じ。源龍は黒い鎧をまとい打龍鞭を得物とし、貴志は私服ながら天下を懐に入れ、羅彩女は赤い服に桃の木剣を帯に差している。

 香澄は紫の衣に鞘に収まる七星剣を佩いて。子どもたちは緑の服に緑のとんがり帽子。

 夢からそのまま出たような格好だ。

 しかし、この身は、肉体は? なぜ夢を通じてあちらこちらへとゆけるのだろうか。

「そんなことは、どうだっていいじゃないか」

 と、世界樹の子どもは笑って言う。そう言えばこの子どもは名を名乗らない。

 源龍がもしキレて子どもらに襲い掛かった場合、香澄が七星剣で相手する構えをしているのは雰囲気で分かった。

 貴志はともかく源龍と羅彩女は子どもや香澄に襲い掛かってもおかしくないほど、戸惑いを隠せなかった。

 空を見上げれば、やけに青い。空気は冷たいが身を震わせるほどでもない。感じからして秋のはじめのようだ。

 天頭山は天高くそびえ、雲に覆われて周囲が白に染まったり、頂上の火口から雲海を見ることもできるのだが。この日は雲はひとつも見当たらず。太陽が陽光を降り注ぐのみ。

「憎たらしいほどの秋晴れだなあ」

 貴志は周囲を見渡しながらため息をつく。

「山の上がこれなら、下の方は夏なんじゃないの?」

 山の上と下とでは気候も違うことを学んだ羅彩女は、ぽつりとそんなことを言って。貴志は頷いた。

「それで、どうやってここから出るんだ? また嵐が来るのを待つのか?」

 空を見上げて、源龍は皮肉っぽく言う。

「天頭山教は?」

 ふと、船縁から人がいないか火口周辺を見渡す。しかし人はいなさそうだ。

 源龍はやってらんねえと船室に戻り、「食いもん」を探し求める。

 倉庫には干し肉があり、それを外に引っ張り出してかじりつき。ひと息ついて、雑に鎧を放り投げるように脱ぎ去って、横になった。

 船床で仰向けに大の字になり。青い空を見上げる。ほんとうに雲ひとつなく、この世から消え去ったのかと思うほどだった。

「あッ!」

 羅彩女はきょろきょろ自分の周囲を見渡す。

「うざい鬼が出ない!」

「ああ、それは、世界樹がそうはからったんだね」

 リオンは応える。

「でも呼べば出るよ」

「え?」

「念じてみなよ」

「……出ておいで」

 すると、ふわりふわりと、くらげのように、半透明の鬼が自分の周囲を漂う。人はもちろん魚や犬猫に鳥など。羅彩女の周りを漂う。

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