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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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再次夢想

 小説を書きたい気持ちはあったが、それはひとまず置いて。

 その夜、宴が催された。

 李太定と文星連の夫妻は場を取り仕切って、劉開華をもてなした。そして、香澄や源龍、羅彩女に世界樹の子ども、リオンとお別れの会でもあった。

 太定は星連と相談し、美少年ぞろいの歌舞団を招いて、その歌と踊りをもって公主に最後のおもてなしをする。

 場は一気に華やいだ。

 劉開華も喜び、歌と踊りを堪能したが、かつてのように無邪気に喜ぶようなそぶりは見せず。公主として、しとやかに微笑みを見せて、

「カムサハムニダ」

 と暁星の言葉で感謝の意を伝え、労をねぎらい、これからも暁流ヒョりゅうを愛好することも伝え。

 少年たちはぱっと笑顔を弾けさせて、将来、辰に招かれて御前で歌舞を披露できるよう努力しますと語り。劉開華も笑顔で頷いた。

(公主か……)

 貴志は彼女の振る舞いを見て、しくしくと胸に刺さるものを覚える。暁流が好きな一少女ではもういられないのだ。こんな可憐であどけない少女に一大帝国を背負わせる政治と言うか、宿命と言うか、上手く言葉にできないが、そういったものに対し静かな怒りをも覚えた。

 公孫真はもちろん。香澄も侍女のようにそばに控えて一緒にしとやかに静かに拍手をし、羅彩女もそれにならい。しかし子どもたちは無邪気にはしゃいだ。子どもの特権であった。

 しかし源龍はひたすら飲む、食うだった。歌舞団の歌舞の披露になると、いつの間にか姿を消して、陰で他の邪魔にならぬよう飲み食いして、それなりに気を使ってはいた。

(なんか情けねえが、仕方ねえ)

 と、少し愚痴をこぼしながら。

 楽しい時は瞬く間に過ぎて、宴はお開きになって。それぞれ自室に戻って。明日に備えて寝台に横たわった。

 楽しいひと時のおかげか、気持ちは軽やかにして素直に、目を閉じれば眠りの闇に落ち着けた。

 と思ったら。

「起きなよ」

 と起こす声に起こされて。

 ぱっと目を開けば、そこは明るい草原、世界樹がたたずむ。

「……!」

 自分たちは世界樹の木陰にいる。世界樹の木陰で寝ていて、起こされて、上半身を起こした格好だ。

 源龍と貴志、羅彩女は息を呑んだ。世界樹の子どもとリオンは意味深な笑顔を浮かべている。香澄は静かに座っている。

 他の子どもたちはいない。自分たちだけのようだ。

「またなんかあるのか、まったく……」

 源龍は思わず愚痴った。戦い終えてひと息付けたと思ったら、である。

「そういうことだね」 

 世界樹の子どもはにこにこと言い。リオンも頷く。

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