再次夢想
(本当は皇帝皇后両陛下のご意志で廃嫡し、毒をもって死を賜ったのだが……)
事の次第を康宗と靖皇后から聞いていた。もちろん公主には秘密である。
「公主さまは、暁星に騒乱起こるとき、お連れの方々とともに奮戦し国を救っていただきました。公主さまは我らにとって英雄です」
そう言うのは李瞬志だった。任地から他の三人の弟、志烈、志明、志徳もついさきほど漢星に帰ってきて。ここ並んでいた。末弟の貴志はまだ官職に着いていないので、ここに並ぶのは許されなかった。
空気は冷たい。厚着はしているのだが、それでも冷たい空気が服を貫き肌に張り付くようだった。雨音もする。これから冬がやってくるのだというのを、秋雨が告げていた。
辰からの使者は、「それはまこと偉大なこと」と愛想よく笑みを浮かべて応えた。
「しかし、暁星の世子も突然の病で亡くなられたとは。なにが両国の未来を奪ったのでしょう。ご冥福をお祈りいたします」
雄王と安陽女王は丁重に礼を述べ感謝の意を伝えた。
使者は知っているのかどうか。世子の評判は悪く人心は離れて。ゆえに形の上は国葬をもって弔ったが、その規模は小さくささやかなものだった。辰では監禁し表に出さなかったので誤魔化しが効いたが、暁星では抑えきれず、表でやりたい放題だったため、誤魔化しは効かず。臣民の納得を得るため、ささやかな葬儀で済ませた。
劉開華と公孫真は葬儀に列席してもよいと言ったが、丁重に断った。
暁星の王位は側室の生んだ他の世子が継ぐであろう。しかし辰はどうするのか。
「皇帝皇后両陛下の直筆による書状でございます。私が言うよりも、これを読まれた方がよいでしょう」
と書状をうやうやしく手渡し。それを読んでみれば。
「……!」
目を見開いて驚かざるを得ない劉開華だった。
その書状には、皇太子劉賢急逝のため、同腹の青藍公主こと劉開華を女帝となし。暁星の世子を婿に迎え。両者の間にできた男児をに帝位を継がせる旨が書かれていた。
ただし劉開華は行方不明なので、捜索し、発見し次第帰ってきてもらい。それから段取りをする、とも書かれていた。
劉開華は平静を装っているが、父と母は何を考えているのかと思わざるを得なかった。
(私が女帝になり、光燕世子を婿に。無茶なことを)
世子の人となりを知っているので、いやだ、と素直に思ってしまった。あんなことになり、多少の憐憫の情は感じるが。それとこれとは別である。
ふとふと、
(帰らなきゃいけないかな)