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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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再次夢想

「突然のことで驚かせたにもかかわらず、皆さまには大変お世話になり、感謝しています」

 そう言えば。

「とんでもございません」

 と返ってくる。

 劉開華は王と女王や臣下らはもちろん、宮殿の造りにも目をやった。辰の宮殿に勝るとも劣らぬ造りである。ここは一国の威厳を懸けた誇りの場でもあるのだ。

 その雰囲気も厳粛である。

(でもこの国にも)

 一見厳粛そうな宮殿内での、どろどろとした権謀策術もあるだろう。それが光燕世子のような者を生んだのかもしれないと思うと、人の世の難しさを思わされた。

「手厚くおもてなしをさせていただきます。気の済むまでどうかごゆるりとしてください」

「はい。お世話になります」

 という会話を、諸葛湘を通じてした。難しい話は終わり、あとはしばらく世話になる、ということを話して謁見は早めに終わった。

 それから、王の私室に招かれて。女王も同伴し。余人を交えず。

「我が子の無礼をお詫びいたします。この罪、万死に値します」

 そう言って王と女王はひれ伏した。もし光燕世子が勝ち、公主を傷つけたなどあっては、国際問題に発展し、戦争もあるかもしれなかった。

 それを思えば、世子は成敗されてよかった、という旨の事を雄王は言ったが。安陽女王は沈黙。

 我が子が咎人となり成敗され、それを詫びねばならぬ親の心痛はどのようなものだろうか。

「もう済んだ事です。それに私も、私情で国を出た身。罪があるのは同じです。暁星の方々にはご迷惑をおかけします」

「お心遣い、痛み入ります」

 王と女王は跪きながら感謝の意を表した。劉開華は両者の手を取り、立つよううながした。特に女王の手は強めに握って。

「何と言えばよいか。私は恨みに思っておりませぬ。あなた方と同じように、世子の冥福を祈っております」

 王はこらえているが。女王はこらえきれず涙を流し。公主の目にも涙が溢れて、零れ落ちた。

 そこで話は終わり。

 李家の屋敷に戻った。

 以後、あの騒乱が嘘のように、復興の槌音を耳にしながら日々を過ごした。

 貴志はゆっくり本を読み……。と言いたいが、源龍は鍛錬を怠らず、時に嫌がる貴志を引っ張り出して稽古の相手をさせた。

「ゆっくり読書をしたいのに。もう怒ったぞ!」

 そう言って、本気で稽古用の刃引きの剣を振るって源龍をとっちめてやろうとしたこともあったが。

「いいぞいいぞ、そうでなきゃな!」

 と源龍は満足そうに稽古に励んで。打龍鞭を振るった。

 その様子を他の面々はおかしそうに、いい暇つぶしになると楽しげに見物した。

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