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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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再次夢想

「王さま、女王さま、どうかご自分を必要以上に責められまするな」

 見かねて太定と諸葛湘が諫言する。瞬志は何も言わない。世子のために部下を失い。率直に言えば、世子に対し、心は穏やかでいられない。

 ともあれ、辰の公主である。劉開華が政治的な問題の存在であることは確かだった。

 鬼の危機が去っても、辰との国交上の問題がある。

「なぜ公主が暁星にいるのか。誘拐したのか」

 など言われたら、どうなることか。ちなみに皇太子の死もまだ暁星に伝わっていない。瞬志は少し話を聞いたが、にわかに信じがたいことで。あの時、世子にとり憑いた悪鬼が辰の皇太子の鬼であるなど、想像を絶している。

 その皇太子のことも知りたいことだった。

 その他諸々、翼虎も含めて、昨日の激闘は人知を超えた出来事でもあった。

 が、辰の様子については、まだ日が経っておらず、何の報告もないのも言うまでもない。

「我らに何ら後ろ暗いことはありません。何があろうとも、正々堂々としておればよいのではないでしょうか」

 と、バッサリ斬るように瞬志は断言する。

「むしろ我らは公主を保護した。感謝されこそすれ、恨まれる筋合いはありません」

「そうですね、瞬志の言う通り。辰からの使者が公主について尋ねてきても、堂々としてありのままを話せばよいのではないでしょうか」

 安陽女王はそう言い。太定も諸葛湘も同意し、雄王も頷いた。

 光燕世子のなきがらは宮殿内の一室に安置し。葬儀の段取りを進めている。もともと評判のよくなかった世子である。嘆く臣下は皆無であった。その気配を察し、王と女王は嘆きを禁じえずとも、人前で嘆くことをとどめおき、落ち着いて政務に携わる姿を見せようとした。

 これも国を安定させるためであった。

 性悪と言えども、やはり我が子、それも正室の女王が生んだただひとりの世子である。女王の嘆きは王よりも深かった。

(我が子のために満足に泣くこともできぬ。これが女王の座に着くということか)

 苦悶しきりにして、ついに具合を悪くし、やむなく退席して侍女にともなわれて自室に戻った。

 さすがに瞬志もそんな女王には同情した。

「ともあれ、公主やそのご一行が我らのために鬼と戦ってくれたのは紛れもない事実。しばしごゆるりと暁星に滞在していただきながら、様子をうかがうしかないと存じます」

 瞬志は言い。太定も異を唱えず、頷き。どうでしょうかと王に問う。

「ふむ……。それしかないようだな」

 王も李家の親子に同意し。公主一行を託した。

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