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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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再次夢想

 ともあれ、劉開華は召使いの女性の勧める椅子に腰掛ける。この椅子は北向けで、上座扱いの椅子だった。そこに辰の公主を座らせるのは、礼儀作法の面でも理にかなっている。

 円卓にはまだ食事が運ばれてなかったが、劉開華が着席すると、次々と食事が運ばれてきて。その匂いが食欲を煽った。

 源龍の腹が「ぐう」と鳴る。それを聞いて、劉開華は、くすり、と微笑んだ。

「そんなにおかしいか? オレの腹の虫が」

「ごめんなさい。なんだかおかしくて。うふふ、ふふふ。あはは」

 なんだよ、と言いそうになった源龍だが。羅彩女は卓下で袖を引っ張って自制を促した。

(まあ、いいか)

 沈んでいた劉開華が笑顔になるのを見て、怪我の功名と思うと、悪い気はしなかった。

 雰囲気も朗らかになる。

 食事もひと通り運ばれて。

「どうぞお召し上がりください」

 と言う召使いの言葉に、一同は「いただきます」と箸を手にして口に運んだ。ちなみに毒見は済ませてある。

 なんでもない日常の光景である。このなんでもない日常がいかにありがたいかと、公孫真はつくづく思った。

「美味しいね」

 劉開華は舌鼓を打ち、隣の香澄と微笑み合う。

 食事の途中、失礼しますと貴志の母、文星連ムンスンニョンがやってきて、

「主人曰く、今日は皆さまにごゆるりとおやすみいただきたいとのことで、何かしらのお声がけはせぬとのことです。ただし、敷地から出ぬようにしていただきたいとのことです」

 と言うと。

「わかりました。お心遣い、感謝します」

 と、公主の威厳を含めて、礼を述べた。星連も一緒にとも言ったが。気兼ねさせてはいけないと言い、自室に戻っていった。

 そのころ、李太定は宮殿にのぼり、息子の瞬志と、辰の大使・諸葛湘しょかつしょうとともに今後の協議をしていた。安陽女王アンヤンじょうおうも同席する。

 諸葛湘も、鬼が漢星ハンスンに溢れたとき自らの宿舎に籠り。一時は死を覚悟したこともあった。

 諸葛湘の遣わした密偵からの報告はまだない。辰からも何かしらの便りもない。

 それよりも。

光燕クァンヨンめ、なんとむごいことに」

 雄王と安陽女王は運ばれた嫡子光燕世子のなきがらと対面し、嘆きを禁じ得なかった。このような最期を迎えようとは。

 騒乱に、鬼の出現は原因不明とされて、真実は隠された。もし世子がらみと知られれば、民衆は王家に不信感を抱きそれに乗じた心無い者が内乱を起こすこともあり得た。暁星の王侯貴族も一枚岩ではない。

 世子は突発的な病による病死であるとのちに公表する手筈を整えているが。なんと虚しいことであろう。王と女王は忸怩たる気持ちを禁じ得ない。

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