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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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再次夢想

「ぷわー、生き返るぜ!」

 まるで犬のように頭を振り、ふうー、と大きく息を吐き出す。

「ははは、朝から豪快なことですな」

 と、公孫真とリオンが召使いに案内されてやってくる。彼らも身体を洗いに来たのだ。世界樹の子どもはまだ寝ているという。

 屋敷に浴場はあるにはあるが、支度が出来ていないので、やむなくこの井戸で、ということだった。

 季節は秋、朝晩は涼しくなったとはいえ、激闘のため一晩経った今でも身体が火照る感じはなくならず。井戸の水が心地よかった。

 その一方、浴場は支度が出来ていないとはいえ、そこでは女性陣が大桶に水をためて、その水で布を濡らし身体をぬぐっていた。

 さすがに女性は中庭の井戸というわけにはいかないので、空の浴場だった。

 劉開華は元気がない。思いつめた様子だった。

(無理もないねえ、変態でも兄貴は兄貴だってことか……)

 自分だったら見放して、死んだら喜ぶところだが、さすがに教育を受けた公主はそう思えないそうで。

「悪いけど、先に出るよ」

 と、羅彩女は身体をぬぐい終えてさっぱりしたら服を着て早めに出てゆく。香澄も身体をぬぐい終わって服を着たが、浴場からは出ず。劉開華を待った。彼女は動きが緩慢で、まだ終わりそうもなかった。

 ちなみに用意された服は暁星のチマ・チョゴリだった。

「あの」

 召使いの女性が心配そうに顔を覗かせる。

「香澄さま、でしたね。後は私が付いていますから」

「ありがとう、でもいいわ。私が付いてるわ」

「……わかりました」

 召使いの女性はそう言って離れていった。

 しばらく待っている。まるで人形のように動かず、静かに。

 ようやくぬぐい終わり、服を着て。身体がだるそうで、よろけそうになる。咄嗟に香澄は駆け寄り、肩を支える。

「大丈夫?」

「ごめんなさい」

 劉開華は詫び、力を入れて歩き出す。浴場から出れば、お食事の用意ができておりますと、召使いに大広間に案内された。

 本当は部屋に戻りたかったが、空腹を覚えて、食事をとることにした。

 大広間の円卓では、男性陣と羅彩女が先に着いていたが。劉開華が姿を現して。

「ほら、立つんだよ」

 ひたすら食事を食すことを待ちわびている源龍の服の肩の部分をつまんで、羅彩女は立つよううながした。他の面々は進んで立った。

「公主さま!」

 公孫真は一礼をし、貴志も、他の面々も続けて一礼をし。三歩後ろで控える香澄も一礼をした。その所作のしとやかさは、宮中の侍女さながらであった。

(この子は何者?)

 どこでそのような作法を学んだのだろうか。武術・剣技といい、教養といい。優れたものを持ち合わせている。が、高貴の出ではないが、市井の出でもない。まことに正体不明。

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