再次夢想
勉学の才はあるが、軟弱でお人好し、という印象はなくなり。麗は、心の底から貴志を見直し、瞬志同様に尊敬するようになっていた。
劉開華も気を幾分か取り戻して、頷いて「礼には及びません。麗さん、あなたも無事帰れてよかった」と、朱家親子を見送った。
ともあれ、一同ひどい疲労に襲われて。香澄ですら、ふわあ、とあくびをしてしまう有様にて。
しかし召使いはいない。皆殺しにされてしまって……。
やむなく羅彩女と香澄が劉開華の着替えの手伝いをして、寝台に横たわらせて。それから自分たちが寝間着に着替えて、寝台に倒れこむように、寝付いた。
男たち、子どもたちも、着ているものを脱ぎ捨てて寝間着に着替えて寝台に倒れこんだ。
……そして夢を見た。
世界樹のそばにいる。広い草原に、ただ一本世界樹がそびえ立ち。その周囲にはたくさんの子どもたちがいた。
皆わいわいとはしゃいでいるが、その中に、ふたり、めそめそと泣いている子どもがいた。
「あれは……」
よくよく見れば、幼くなって顔立ちは変わっているが、それが光燕世子と劉賢であることがわかった。
他の子どもが慰め泣き止むようにするが、一向に泣き止む様子はない。
「なんでだろう、涙が止まらない」
そう言って、ひたすら泣き続ける。
それを見て、ため息をついて、首を横に振るしかなかった。
世界樹は黙して語らず。
それから、有無を言わさずに目は閉じられて。深い闇の中でほんとうの眠りについた。
どれだけ眠っただろうか。
翌朝、普通に目が覚めた。
「起きたか……」
源龍は無造作に服を着替えて、部屋を出れば。新しく手配された召使いや家来がが屋敷内を行き来していた。
「……」
頼みごとをしようと思ったが、暁星の言葉がわからず、思わず立ち尽くしてしまう。そんな様子を見た召使いのひとりが、
「なにかご用がおありですか?」
と、辰の言葉で話しかけてくる。この屋敷には諸葛湘をはじめ、辰の要人も客人として来るので、辰の言葉が分かる者が何人か置かれていた。
召使いは、一瞬顔をしかめた。臭うのだ。
「ああ、すまねえ、身体を洗いたいんだが」
昨日必死こいて戦って、そのまま寝込んだ。だから汗を流せなかった。汗を流したいと思ったのだった。
「はい、どうぞ……」
召使いは案内し、屋敷を出て。中庭の井戸に連れていかれる。
そこには先客がいた、貴志だった。井戸の水を桶にためて。濡らした布で身体をぬぐっていた。
「やあ、起きられたかい」
「ああ、起きられたぜ」
源龍は井戸の水を汲み上げ、釣瓶の水を頭からかぶった。