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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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翼虎飛翔

「我が炎で燃やし尽くしてくれる!」

 宙に浮き、炎の剣を断ち、落下してゆこうとする香澄に炎に包まれる劉賢が迫る。このまましがみつかれて、焼かれてしまうのか。

「……ほおッ!」

 あらぬ呻き声があがる。太く青い血管の浮かぶ顔の大きく開けられた口からあらぬよだれが垂れ、その場に止まった。

 見れば劉賢の胴に投げつけられた打龍鞭がぶち当てられていた。源龍は咄嗟に得物を投げ、命中させたのだった。

 胴に当たった打龍鞭は落下し、しかし香澄も落下してて。翼虎はまず香澄のもとに飛んで。源龍は腕を伸ばして、互いの手を握り合い、その背中に導き。次いで別方向に飛んで、もう片方の手で打龍鞭を取った。

「どうだ!」

 打龍鞭はもろ命中した。貴志は顔を上げて見上げ、様子をうかがう。肋骨の数本は折れてもおかしくない。

(世子には酷だけど、改心せねば多少痛い目に遭われてもやむを得ない)

 ということを考える。世子のあらぬ心によって、大切な人々が、さらに多くの人民が命を失った。無下に殺されたのだ。とうてい許せることではない。しかし、それでもなお、貴志は世子が改心することを期待する自分にも気付いた。

「どうだ!」

 源龍も劉賢・光燕世子の様子をうかがう。背中の香澄とともに、いつでも戦える態勢を保ちつつ。

 羅彩女は眉をしかめて香澄を睨んでいる。世界樹の子どもとリオンは、それを見て苦笑する。

「お前はひっこんでおれ!」

「黙れ、私の身体だ!」

「お前に代わって天下を取ってやろうと言うのだ!」

「それは私自身がやる、お前こそ私の身体から出て行け!」

 突然、宙に浮いたままの状態でひとりでなにやらと叫び出した。

「お、中身がお目覚めか」

 源龍は意地悪そうな笑みを浮かべる。ひとり芝居のような、滑稽さが意地の悪い笑いを誘った。

「むう、こうなればやむを得ぬ。もうこの依り代はいらぬ!」

 右手を高々と掲げ、指を伸ばす。なんと爪がにわかに伸びるではないか。鬼となった劉賢に、ここまで依り代の肉体を操る力があるとは。

「……あッ!」

 貴志は思わず呻いた。源龍は舌打ちしながらふたたび打龍鞭を投げつけた。しかし打龍鞭は避けられて、虚しく落下して、その先を地面に突き刺し直立した。

 その時には、鋭く伸びた爪が自らの身体に、心臓の位置に突き刺さって。さらに力をこめて、めり込ませる。 

 劉開華は思わず目をそらした。

「……!」

 世子を包む青白い炎は消え、顔から太く青い血管も消えて、左胸に右手をめり込ませた体勢のまま落下した。


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