表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
124/539

血腥魂哭

 が、しかし。

「たわけがッ!」

 突然、くうぜるような爆音を立て、火山の噴火のような爆発が起こり。三人はたまらず吹き飛ばされて、今度はそれらが背中を打って落ち。

「くそ」

 源龍は呻きながら起き上がり。香澄も無言ながら起き、貴志も「いてて」とつぶやきつつ起き上がる。

 三つの火の玉は主のそばに来て、それを守るように周辺を飛び交う。この火の玉を呼び、一瞬火力を強め爆発させて迫る三人を吹っ飛ばしたのだった。

「おのれ、この私を散々侮辱しおって」

 ふとい血管の浮かぶ禍々しい顔の、青い血管が走る顔の、血走った目で、三人に憎悪のまなざしを向ける。

「くそ、なんてつええんだ」

「あと少しだったのに」

 源龍と貴志は劉賢の思いの他の強さに辟易する。香澄は弱音を吐かぬが、同じ様子だった。それでも目は澄んで、なにか達観しているようだった。

 屋敷には幸い鬼は迫らぬ。おかげで傍観している者たちも、今のところは無事ではあったが。

 劉賢は獣のように吠える。

「お前たちは私自ら殺してやる。いや、極限までいたぶりつくし、息の音が止まる寸前のところで野に放ち、犬狼などの獣の餌にしてやる。生きながらに食われ、獣の糞便になるのだ」

 屋敷の外では、鬼が犬狼や虎のごとくに暴れ回り、人々を凶気の牙にかけていた。守備兵もいて必死の思いで戦うのだが、いかんせん普通の武器で滅することはできず。抵抗虚しくこれらも凶気の牙の餌食となった。

 火の手も上がった。鬼が火をつけるということはないが、火を使用中に襲われてしまい。その火を抑える者がなくなって。燃え広がってゆくのであった。

 皮肉にも空は快晴。太陽も眩しく。青い空を雲が心地よさそうに泳ぐ。地上の惨劇に対し、空はあまりにもむごいほどにのどかだった。

 家来や召使の鬼たちは。

「おおお。――」 

 鬼ながら涙を流し、この有様をひたすらに嘆いた。

(なんとかならないのか)

翼虎イグホは、翼虎は! 翼虎よ、我らを助けたまえ!」

 たまらず貴志は翼虎を求めて、空に向かって叫んだ。

「やめろ! もう翼虎なんざ当てにならねえ。こうなりゃ刺し違えてでもこいつを仕留めてやる!」

 源龍は血気に逸り、打龍鞭を振るって駆け出す。援護と香澄も七星剣を握って続く。

 しかし貴志は。

「……ッ!」

 何を思ったか、ふところから筆・天下を取り出し。家来や召使に瞬志の手勢の武士のなきがらに駆け寄り。傷口からしたたる血を、筆先につけているではないか。

「なにをしているんだい?」

 羅彩女はそれを見て、ぎょっとしてしまった。筆先になきがらから流れる血をつけるなんてと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ