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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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血腥魂哭

 たまらず吹っ飛ばされたものの、公孫真以下他の者たちが跳躍して逃げるいとまはできた。が、武士は叩きつけられるように倒れ落ち、そのままかたく目を閉じて息絶えた。

「……私のために!」

 公孫真はすぐに武士のそばに駆け戻りたかったが、火の玉がから逃れるためできず、駆けながら感謝と冥福の祈りをささげた。

「だめだ、皆、逃げろ!」

 貴志は武士たちに言うが、彼らは逃げない。彼らはあくまでも戦うと言い、宙に浮かぶ劉賢を睨み付ける。

「我らは誇り高き暁星の武人! 世子といえども悪道に落ちし者をどうして許せようか!」

「ならば、死ね!」 

 応えるのは光燕世子ではなく、劉賢であるが。武士たちにはわからない。それもおかまいない。放った火の玉を方向転換させて、瞬志の手勢に向ける。

「だめだ、逃げろ」

 かすれるような声で瞬志は言うが、風に流されて声にならない。代わりに貴志が逃げろとさけぶが。武士たちは得物を構えて迫る火の玉と対峙し。しかしかなわず、ことごとく吹っ飛ばされて。

 その瞬間に絶命し、地に叩きつけられて横たわるときすでに屍になってしまっていた。

 瞬志は堅く目を閉ざし、貴志は目をそらし正視できなかった。

「ひでえ」

 さすがの源龍もそうつぶやかざるを得なかった。香澄は首を横に振る。

 劉開華は劉賢がそうしているのか、襲われる事はなかったが。もう泣きっぱなしだ。羅彩女と子どもたちはそばにいてやるが、慰めの言葉も浮かばない。

 朱家親子、特に麗も恐怖で震えて身動きもままならない。

「そうだ、その女。朱麗と申すのか。お前は依り代が欲しがっているから、殺さないでやる」

 依り代の心の中の中までわかるのか、もはや劉賢となった光燕世子は麗向けて禍々しくにやけた笑みで言い。麗はいたたまれず、両親に囲まれながら耳をふさぎ心を閉ざすしかなかった。

 ひと通り殺し終えて、火の玉は主のそばに戻って。

 刹那、屋敷周辺がまた騒がしくなった。世子の手勢や天頭山教の信徒らは逃げ、あるいは劉賢に殺されて全滅してしまったが。それと入れ替わるように鬼が現出し、人に襲い掛かったのである。

 鬼の数は夜空の星のごとくに多く数え切れぬ。それほどの一瞬にして大軍が湧現したのである。

 瞬く間に多くの人々が死に、暁星の賑やかな都、漢星は地獄にされようとしていた。

「皇太子よ、なぜそのようなむごいことをなさる!」

 公孫真の叫びも無視されて、劉賢は心地よさげに地上を見下ろす。

「ははは、ふはははは! いいぞ、殺せ、殺せ! ふはははははは!」

 公孫真の言葉など聞こえても聞こえない。ただ愉快に笑うのみ。

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