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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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血腥魂哭

「なんと恐ろしい。世子さまはもはや世子さまではない。オレは降りるぞ!」

 手勢の誰かがそう言い出し。逃げ出す。最初の鬼の出現で数名逃げ出して、それでも残った者たちも、この訳の分からない混沌とした展開に混乱を禁じえず、それが内在していた恐怖を増幅させていた。

「オレも!」

「オレも降りるぞ!」

「やはり我が身がかわいい」

 それは一気に伝わって、皆で駆け逃げ出す始末であった。さらに天頭山教の信徒らにもそれは伝染した。

「考えてみれば、貧しくても天頭山でのびやかに暮らせればそれでよかったのだ。なぜ私はあらぬ野望など抱いてしまったのだろう」

 などと言い出す者があり。その目を、気を失った天君に向けて。

「この人の強烈な指導力に引かれてついていったが、もうついゆけぬ」

 などと言う。

「そうだ。天頭山を仰ぎ見ながら、のびやかに暮らすのが我らの本望であったはずだ」

「耶羅の王族の末裔だって? そんな話初めて聞いた。あらぬ心の持ち主で、教団をのっとったのか」

 他の者も次々に手のひらを返して、教主を批判しだし。批判しながら、やってられぬと、脱兎のごとく逃げ出した。

 だが……。

 劉賢に憑かれた光燕世子の、青白い炎に包まれてふとい血管の浮かんだ禍々しい顔は不気味な笑みを浮かべて。

「やめろ!」

 公孫真は咄嗟に叫んだが、かまわずに火の玉を飛ばし。逃げる者たちを追わせて、ぶつけた。

 ぎゃあああ。――

 という悲鳴が響き渡り。朱家親子はたまらず目を閉じ耳をふさいだ。子どもとリオンもさすがに目をそらした。

 火の玉は逃げる者たちを追い、ぶつかり。たまらず吹っ飛ばされて、地に強く打ち付けられて死に、あるいは火だるまにされて転げ回って焼き殺されてと、まさに地獄を湧現させたのであった。

 劉賢はそれを満足そうに眺め、火の玉をそばに戻すと、それから視線を劉開華に移す。

 前に公孫真と羅彩女がかばって立つ。

「公孫真、唾棄すべき者よ」

 何度か妹に迫り、それはことごとく公孫真に邪魔されてしまって。願いをかなえることはできなかった。

「そうだな、まず一番最初にお前を殺してやる!」 

 さきほどと同じように、三つのうちひとつの火の玉が撃ち放たれた。それは光の速さで、避ける間もない。すぐさま目の前まで迫り、公孫真は観念し、目を閉じた。が、しかし。

「うおお!」

 叫び声が響いた。すぐ近くで。何事かと思えば、何と瞬志の部下の武士が公孫真をかばって咄嗟に前に立って、代わりに火の玉に当たったのである。

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