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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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血腥魂哭

「聞き分けのねえ女だ!」

 掴んだ手にさらに力を入れ、突如駆け出し。天君はたまらず引き摺られる。さらに、おうりゃ、と放り投げられて。

「きゃあ」

 と、悲鳴を上げて尻もちをついて、転んでしまう。その刹那に、起き上がるいとまもあたえず劉開華と香澄が駆け寄り。取り押さえ。

「ごめんなさい」

 香澄が首筋を手刀で打ち、気絶させる。

 この間、一瞬の出来事だったが。自らを劉賢と名乗った光燕世子はあらかた鬼も取り込んで。その様子を眺めて。

「開華、お前は皇后だ。さあ、私と一緒に辰に帰ろう」

 などと言う。その、青白い炎ごしに見える顔は、禍々しく、ふとく血管まで浮いて人から遠ざかっているかのようだ。

「もう完全に世子は取り憑かれたのか」

 一同唖然とする。天頭山教の信徒や世子の手勢らは混乱を禁じ得ない。世子はどうなってしまったのか。

 特に劉開華の心痛は。公孫真も目をそらさざるを得ない。

「お兄さま、なぜそのような。どうして私をいじめるのですか」

 そう言いながら木剣を落とし、手で顔を覆い、膝をついてついに泣き出してしまった。

「いじめるだと?」

 妹の言葉を聞き、不可解な顔をする。

「私ほどお前を愛している者はいない。――」

 ぶうん、と唸りを上げて打龍鞭が迫る。源龍だった。会話の途中で野暮な真似だろうが、戦いは戦いでありお喋りの余地などないと、根っからの戦士は問答無用だった。

 しかし素早く後に跳躍し、さらに源龍も追い打龍鞭を打とうとするが。

「下衆が」

 と今度は真上に跳躍し、打龍鞭が届かないところまで上がり。一同を見下ろす。

「畜生めが!」

 忌々しく吐き捨て光燕世子、いや、劉賢を見上げる。気が付けばその隣には貴志と香澄。

「なんだお前ら、でしゃばるな!」

「君ひとりじゃ無理だよ」

「そうよ、私たちすくなくとも三人でなきゃ勝てないわ」

「ふざけるな、こいつはオレの獲物だ!」

 源龍は助太刀を拒むが。それを見下ろしていた劉賢は不敵な笑みを浮かべて、青白い火の玉を三発、三人向けて撃ち放てば。

 三人は跳躍しその場から離れて避けようとするが。火の玉はそれでも追いかけてきて。さらに速度を上げて。

「うッ」

「わあ」

「……。ああ」

 それぞれ呻き声を上げて、火の玉に当てられて吹っ飛ばされて受け身もままならず地面に叩きつけられてしまった。

 火の玉は劉賢のそばまで戻って、周囲を守るようにぐるぐる回る。

「一撃で殺すつもりで放ったが、それでも死なぬとは。それなりの手練れではあるのだな」

 とそれなりに認めつつも、

「ふん、だが他愛もない。三人でも勝てぬなそれでは」

 余裕綽々で、よろよろと起き上がる源龍と貴志、香澄を見下ろしながら笑い飛ばす。

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