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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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血腥魂哭

 時は過ぎ、白羅も滅び。様々な紆余曲折を経て、半島は今は暁星が治めるに至る。

 ともあれ、耶羅の時代など、もうどのくらい昔の事か。そんな昔の悲願を今も抱く者がいるなど、にわかには信じがたい事ではある。

「信じるも信じぬも勝手にするがよい。私の本当の名は、南達聖智ナダル・ソンチ! 私は私の悲願を達成させるのみ!」

 貴志らの反応を見て、天君は吐き捨てた。

「南達……。たしかに耶羅の王族の姓だが」

 その名も騙りなのか、ほんとうなのか、判別する術はない。

 これらは暁星の言葉で語られて、源龍にはわからなかったが。貴志に教えてもらい。

「馬鹿野郎が!」

 源龍は歯噛みする。

「王族だの貴族だの、国の復興だの、ろくなもんじゃねえ!」

 様々な戦場を駆け巡る中で、自らをある亡国の王侯貴族の末裔と名乗り、故国復興のために戦うだのなんだの言う変な奴を何度か見かけたことがあるが。

 もう終わった争いをまた起こそうとしているようにしか源龍には見えなかったものだった。そういったことは、市井の庶民には関係のない事であり、所詮は身勝手さにしか感じられなかった。

 天君が軟鞭を振るうたびに、鬼は弾き飛ばされて。中には転倒をする者もあったが、すぐにゆらりと戻ってきて。果てがない。

 光燕世子は、満足そうに力に浸っていたのが、恍惚とした表情をして、そこから魂が抜けたような腑抜けた顔になった。なにやら精も根も吸い取られたか、抜き取られて果てたような、腑抜けた顔である。

 ことに、目つきなどは死んだ魚の目そのものだった。

 かと思えば、かっと目を見開き。

「我は劉賢! のちの辰皇帝なり!」

 などと大口開けて叫んだ。

 なんだと! と驚く間もない、なんと周囲に集まった鬼どもは吸い込まれるようにして青白い炎に包まれた光燕世子に取り込まれてゆくではないか。

 風が吹く。風に吹かれるように鬼は光燕世子の周囲に集まり、さらに青白い炎に呑まれるように取り込まれてゆく。

「世子さま!」

 天君は駆け寄ろうとするが、その手を掴まれる。

「馬鹿野郎! そいつはあきらめろ!」

 源龍だった。敵であるはずの天君の狼狽を見かねて、諫めて引き離そうとする。もちろん、

「下衆! 私に触るな!」

 空いた手で握る軟鞭を振るい、その顔面にぶち当てようとするが。咄嗟にかわされる。さらに、

「教主に何をする!」

 信徒らも襲い掛かってくるが、源龍とて抵抗をされるのは織り込み済みである。空いた手で握る打龍鞭を振るい、信徒らはことごとく吹っ飛ばされて行く。

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